【SACD】ブラヴィッシモ/周防亮介

 21世紀のヴィルトゥオーゾとはこういう存在なのだろう。周防亮介による無伴奏ヴァイオリン作品集。意欲的な選曲はもちろんだが、演奏が真に驚異的。安心とスリルが矛盾せず同居するしなやかさ。さりとてアンビバレントというのも大仰に感じられるほど、力みなく自然な佇まい。テクニックはすでに世界最先端クラスで、迫力も痛快さも十分だが、あくまで作品の魅力を伝える一要素となる。一気呵成に弾かれがちな「魔王」で登場人物を明確に弾き分ける表現のすばらしさ。エルンストやパガニーニも歌が心に届く。若き俊才による無伴奏の味わいと懐深さに、次代への期待が膨らむ。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2023年2月号より)

【information】
SACD『ブラヴィッシモ/周防亮介』

シュニトケ:ア・パガニーニ/クライスラー:レチタティーヴォとスケルツォ・カプリース/エルンスト:シューベルトの「魔王」の主題によるグランド・カプリース/パガニーニ:パイジェッロの「うつろな心」の主題による序奏と変奏曲/タレガ(ルッジェーロ・リッチ編):アルハンブラの想い出 他

周防亮介(ヴァイオリン)

オクタヴィア・レコード
OVCL-00799 ¥3520(税込)