“類を見ない新しい芸術作品”の誕生
この共演には未知の時間と新しい可能性、そして何より音楽が生まれる時間を共有する興奮が渦巻いている。これまでもさまざまな驚きとワクワク感を与えてくれた2人の音楽家、ピアノ&作曲のファジル・サイと、サックスという楽器に革命の時代をもたらした須川展也が、研ぎ澄まされた才能をぶつけ合うのである。
興奮が頂点に達するのはコンサートのフィナーレ、須川がサイに委嘱をした新作の世界初演だろう。クラシックを土台としながらも数多くの新作を委嘱・初演し、ジャズやワールド・ミュージックのテイストもものにしている須川。その彼を想定し、サイが多彩なプレイ・スタイルと音楽性を反映させた作品を書くことも大いに期待できるだろう。須川自身も「類を見ない新しい芸術作品の予感」とコメントしており、記念すべきデビュー30周年を迎えている今年のクライマックスとなるはずだ。サイ特有のオリエンタリズムにあふれた曲なのか、それとも……。“その時”はもうまもなく訪れる。
コンサートではほかにも、サイのピアノによる即興精神にあふれたモーツァルトのピアノ・ソナタ(第14および15[18]番)、そしてフランクのサックス・ソナタ(言うまでもなくヴァイオリン・ソナタの編曲)、ミヨーの「スカラムーシュ」が並ぶ。バラエティ豊かなプログラムにおける新作初演とあって、サックスの歴史とレパートリーを変える大事件になるかもしれない。会場の聴衆は、その立会人なのだ。
文:オヤマダアツシ
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年10月号から)
10/16(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:コンサートイマジン03-3235-3777
http://www.concert.co.jp
10/17(金)19:00 いずみホール
問:いずみホールチケットセンター06-6944-1188
http://www.izumihall.co.jp