王子ホール バロック・ライヴ劇場 第1回〜第3回

バロックの歓びに満たされる3夜


 難しい理屈は抜きにして、とにかく聴いてみてほしい。そうすれば、心の琴線に触れる至福の時間がお約束できよう。王子ホールが放つ、瑞々しいライヴ感あふれるバロック音楽の新しいコンサート・シリーズ『バロック・ライヴ劇場』。それぞれバロック演奏の最前線を切り取ったような3つのステージは、いずれもエキサイティングで個性的な音楽の歓びに満たされている。
 シリーズの幕開けを告げるのは、ローマ出身の歌姫ロベルタ・マメリ。圧倒的な存在感を誇る美しきソプラノは、今やイタリアのみならず、ヨーロッパ古楽界に旋風を巻き起こす。名カウンターテナーとしても知られる、チェンバロのクラウディオ・カヴィーナ率いる精鋭アンサンブル「ラ・ヴェネクシアーナ」と共演するステージ。モンテヴェルディが求愛や失恋などの思いを綴ったマドリガーレを軸として、《オルフェーオ》など彼のオペラ作品の名旋律、さらに同時代の器楽曲も交えてたっぷりと披露し、まるでゴンドラに揺られているかのような愉悦を与えてくれる。
 そして、卓越した演奏技巧のみならず、演劇の要素も採り入れたスタイリッシュなステージ創りで知られる、フランス古楽界が生んだ器楽と声楽の達人集団「ル・ポエム・アルモニーク」が、第2回公演に登場する。過去2回の来日では、ブルボン王朝の宮廷やヴェネツィアの街角への時空を超えた旅へと、聴衆をいざなった彼ら。今回は「ルソン・ド・テネブル(聖週間のための朝課)」と題して、シャルパンティエ「第7瞑想〜第9瞑想」など清澄な宗教作品を奏で、“復活祭を間近に控えたルイ14世時代のフランスの小さな修道院”へと私たちを招待してくれる。
 さらに、第3回公演には、“新世代のバロック・ヴァイオリニスト”として、ヨーロッパ古楽界の耳目を集めているアマンディーヌ・ベイエが登場。フランス出身で、パリ高等音楽院やスイスのバーゼル・スコラ・カントルムに学び、ボンポルティ国際コンクールなどで入賞を重ねており、4年前に先駆者キアラ・バンキーニの後任としてバーゼル・スコラ・カントルムのバロック・ヴァイオリン科教授に就任したことも話題になった。注目の初来日ステージには、2006年に彼女が設立したアンサンブル「アンサンブル・リ・インコーニティ」を帯同。Zig-Zagレーベルからのアルバムが大きな反響を呼んだ「四季」全曲をはじめ、チェロ協奏曲イ短調(RV420)やヴァイオリンと鍵盤楽器のための協奏曲ハ長調(RV808)など、ヴィヴァルディの緻密な音楽世界を特集する。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ 2014年6月号から)

第1回 ロベルタ・マメリ&ラ・ヴェネクシアーナ 10月16日(木) 
第2回 ル・ポエム・アルモニーク 11月13日(木) 
第3回 アマンディーヌ・ベイエ&アンサンブル・リ・インコーニティ 11月26日(水)
問:王子ホールチケットセンター03-3567-9990 
https://www.ojihall.jp