小菅優「ソナタ・プロジェクト」 Vol.1 開花

偉大なる作曲家の原点を探求するシリーズが始動

(c)Takehiro Goto

 小菅優ほどポジショニングの取り方がうまいピアニストはなかなかいない。楽譜から離れすぎることはもちろんないが、そこにべったりと付きすぎて視界が狭まることにもまったく無縁だ。クールなまでの客観的な視点から弾き始めたかと思えば、作品の本質に迫るべく、次第にその間合いを詰めてくることも。

 そんな絶妙な立ち位置だからこそ、彼女の演奏から浮かび上がるのが、それぞれの作曲家や作品の個性だ。これまでのベートーヴェンの「ピアノ・ソナタ全曲シリーズ」や、水・火・風・土の四元素に基づいた「Four Elements」シリーズなどの企画でも、小菅は各々の作品の個性を浮き彫りにしつつ、それらの音楽に共通する性格にも光をあててきた。

 新しく始まる「ソナタ・プロジェクト」は、テーマごとにバロックから現代にいたる多彩なソナタ作品を組み合わせる。

 今回の第1回は、「開花」。取り上げるのは、バッハ(ソナタ ニ長調 BWV963)、ベートーヴェン(選帝侯ソナタWoO47より第2番)、プロコフィエフ(ソナタ第1番)、ブラームス(ソナタ第3番)だ。いずれも、作曲家の若い時代に書かれたソナタだ。

 それぞれの作曲家の原点であり、その個性を羽ばたかせた第一歩となる作品ばかり。そこには、のちに巨匠として知られる作曲家たちの、意欲にあふれた若々しい息吹も感じられるはずだ。
文:鈴木淳史
(ぶらあぼ2023年1月号より)

2023.2/26(日)15:00 水戸芸術館コンサートホールATM
問:水戸芸術館チケット予約センター029-231-8000 
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