エリアフ・インバル(指揮) 東京都交響楽団

ベートーヴェン最後のピアノ協奏曲とフランクの傑作交響曲

 12月の東京都交響楽団を指揮するのは、長年の信頼関係で結ばれた桂冠指揮者エリアフ・インバル。巨匠が一年の掉尾を飾る。

 第963回および第964回定期演奏会で組まれたプログラムは、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」とフランクの交響曲ニ短調。華麗にして端正な古典派協奏曲と暗い情念が渦巻くロマン派交響曲が好対照をなす。

 「皇帝」では1982年ベルリン生まれのマルティン・ヘルムヒェンがソリストを務める。2001年にクララ・ハスキル国際ピアノ・コンクールで優勝を果たし、ベルリン・フィルやウィーン・フィルをはじめとする名だたるオーケストラと共演を重ねてきた実力者である。来日の機会も多く、ドイツ・オーストリア系のレパートリーを中心に、知性と情熱のバランスがとれた演奏により作品本来の魅力を伝える。近年、ベートーヴェンのピアノ協奏曲全集をアンドリュー・マンゼ指揮ベルリン・ドイツ響と共演してレコーディングしている。現在のヘルムヒェンの充実ぶりを知るには格好の選曲だろう。

 2022年はフランク・イヤーでもある。メインプログラムにフランクの交響曲が置かれるのは、12月10日に作曲者の生誕200年を迎えることを祝ってのことだろう。いくぶん作風が渋いためか、記念の年にしてはフランクが話題になる機会は少なかった気もするが、代表作である交響曲ニ短調はフランスの交響曲史の金字塔とでもいうべき大傑作だ。循環形式を用いた堅固な構築感とダークサイドのロマンの融合はこの作曲家ならでは。重厚にして壮麗な響きを堪能したい。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2022年12月号より)

第963回 定期演奏会Aシリーズ 
2022.12/19(月)19:00 東京文化会館
第964回 定期演奏会Cシリーズ 
12/20(火)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール
問:都響ガイド0570-056-057 
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