フランス音楽をレパートリーの核とした演奏活動で着実にキャリアを重ねている伊藤曜子。藤井一興に師事し研鑽を積む彼女の音色は研ぎ澄まされた輝きを放ち、楽曲の魅力を鮮やかに引き出していく。プーランクの「ナゼルの夜会」は各変奏を描き分けるための音色の多彩さ、強弱の幅の広さが求められるが、伊藤は見事にタッチをコントロールし、楽曲のキャラクター性を浮かび上がらせている。これはメシアンで聴くことができる指の強さ、俊敏さがあってこそ実現できるものであろう。師と奏でる2台ピアノのための協奏曲も力強さと繊細さのコントラストが魅力的だ。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2022年12月号より)
【information】
CD『プーランク:ナゼルの夜会/伊藤曜子』
プーランク:ナゼルの夜会、2台のピアノのための協奏曲 ニ短調/フォーレ:夜想曲第4番/メシアン:「鳥のカタログ」より〈第2番 キガシラコウライウグイス〉〈第12番 クロサバクヒタキ〉
伊藤曜子 藤井一興(以上ピアノ)
延原武春(指揮)
テレマン室内オーケストラ
収録:2013年3月、いずみホール(ライブ) 他
マイスター・ミュージック
MM-4511 ¥3300(税込)