東京佼成ウインドオーケストラ定期演奏会 2014/15シーズン

トップ楽団が新体制でおくる充実のラインナップ


 ジャンル分けなど必要ない。極上の響きは耳のご馳走、素敵な音楽は心の滋養となる——そう思わせるのが、最高水準の技倆で世界に名高い吹奏楽団・東京佼成ウインドオーケストラだ。このほど彼らの2014/15シーズン定期演奏会のラインナップが発表された。今年は、育ての親ともいえるフレデリック・フェネルの生誕100年&没後10年。これを機に、正指揮者が大井剛史、首席客演指揮者がトーマス・ザンデルリンク他の新体制に変わり、定期も年4回から5回に増えるなど、意欲的な充実が図られている。
 幕開けの9月は、フェネルの後任として2010年から10年間常任指揮者を務めたダグラス・ボストックによる「英国の薫り」。グレインジャー、ヴォーン・ウィリアムズなどフェネルも好んだイギリスの名作を、欧州の第一線で活躍する同国出身の名匠が、ノーブルに描く。
 11月は、08年のショルティ国際指揮コンクールの優勝者で、フェネルゆかりのイーストマン音楽院でも学び、現在、米・オーガスタ響音楽監督を務める期待の若手、シズオ・Z・クワハラが初お目見え。自身のバックボーンである「アメリカ」に因んだプログラムで、鮮烈な才能を示す。「ラプソディ・イン・ブルー」のピアノを、13年にN響との共演で絶賛を博した本場の名手ステュワート・グッドイヤーが弾くのも嬉しい話題。
 2015年1月は、ザンデルリンクが就任後初登場。11年のショスタコーヴィチの交響曲第5番の快演以来久々に共演する。演目は十八番のロシアもので、「展覧会の絵」などに加えて、何とハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲(!)を披露。独奏は、神奈川フィル・ソロ・コンサートマスター石田泰尚。ザンデルリンクの王道解釈ともども大注目だ。
 4月は、正指揮者・大井剛史が贈る「邦人オリジナル」曲集。日本の吹奏楽界をリードする作曲家の6作が、耳を清新に潤す。またトップ・サックス奏者でかつてのコンマス・須川展也が、ソリストとして帰還。この共演は実にエキサイティングだ。吹奏楽を熱愛する大井の丹念なアプローチも聴きもの。
 6月は、大井が神様、アルフレッド・リードの没後10年を記念したプログラムを指揮。1982年の定期でリード自身が振った「春の猟犬」「交響曲第2番」などの名品で、氏直伝の音楽遺産を再確認する。また数々のコンクールで入賞を果たした当楽団クラリネット奏者・太田友香の定期でのソリストデビューも要注目。この2回では、就任初年度からオリジナル曲に力を注ぐ大井の正指揮者としての矜持も、名演を後押しするに違いない。
 いずれもコンセプトが明確な公演ばかり。この豊穣な音楽世界を、ぜひ幅広いファンに堪能して欲しい。
取材・文:柴田克彦
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年7月号から)

第120回 ダグラス・ボストック(指揮) 9/28(日)14:00
第121回 シズオ・Z・クワハラ(指揮) 11/22(土)14:00
第122回 トーマス・ザンデルリンク(指揮) 2015/1/17(土)14:00
第123回 大井剛史(指揮) 2015/4/26(日)14:00
第124回 大井剛史(指揮) 2015/6/12(金)19:00 
東京芸術劇場コンサートホール 
問:東京佼成ウインドオーケストラチケットサービス0120-692-556 
http://www.tkwo.jp