フランクの弾き始め1分間で心奪われる。「秘密」を大テーマとして、ピアノ付きの「友情」の2曲が、オーケストラ付きの「秘めた愛」の耽美な2曲を挟む構成の好アルバム。バティアシュヴィリは刹那的な情念に溺れることはないが、統制のとれた表現の幅が恐ろしく広く、懐が深い。常に全体像をイメージしながら細かい表情を彫琢して、大事な瞬間には最高の表現で心をつかむ。フランクは完熟の名演というほかなく、シマノフスキも完璧に手の内に入れている。当代随一の名人であることを存分に示す一枚。ネゼ=セガンは鮮烈な色彩を引き出し、ドビュッシーでは詩的なピアノも披露。
文:林昌英
(ぶらあぼ2022年10月号より)
【information】
CD『シークレット・ラヴ・レター/リサ・バティアシュヴィリ』
フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調/シマノフスキ:ヴァイオリン協奏曲第1番/ショーソン:詩曲/ドビュッシー(ハイフェッツ編):美しき夕暮れ
リサ・バティアシュヴィリ(ヴァイオリン)
フィラデルフィア管弦楽団
ヤニック・ネゼ=セガン(指揮/ピアノ)
ギオルギ・ギガシヴィリ(ピアノ)
ユニバーサルミュージック
UCCG-45057 ¥3080(税込)