エスポワール スペシャル 16 アイレン・プリッチン(ヴァイオリン)

あのアンコールで日本を沸かせたプリッチン再来!

 ワインはどうやらジョージアが発祥の地らしいが、それが世界中で生産されるようになったのは、新しい世代がぶどうの生産から発酵、熟成まで、次々と斬新な発想を積み重ね、実験をし、それがひとつの体系となって、それぞれの土地に根付かせていったからに違いない。実は、クルレンツィス&ムジカエテルナの演奏を聴いた時にそんなことを思っていた。彼らの最初の来日公演で、実演を聴いた音楽ファンの話題を独占したのは、オール・チャイコフスキー・プログラムの前半終了後、アンコールとしてチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲が演奏され、そのソリストをゲスト・コンサートマスターであったアイレン・プリッチンが務めたことだった。彼の華麗極まる音色に驚いた人も多かったに違いない。

 そのプリッチンが日本で行う初リサイタル。トッパンホールの「エスポワール スペシャル」で、ピアノの北村朋幹を迎えて、メトネル、ヤナーチェク、ラヴェル、エネスクという驚くべきプログラムを組んだ。「極めて近い時代に書かれた作品群で、その頃の世界がどうであったかを実感させてくれる」とプリッチンはコメントしている。北村は「エネスクの『第3番』という、触れるのも躊躇うほどの恐ろしい名作に初挑戦するのに、これほど素晴らしい機会があるでしょうか」と語る。まさにその通り。これほどの素晴らしい機会は待っていても訪れないものである。新しい時代の息吹を目の当たりにしたい。
文:片桐卓也
(ぶらあぼ2022年10月号より)

2022.10/17(月)19:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 
https://www.toppanhall.com