“古楽界の雄”が追究する古典派交響曲の軌跡
東京シティ・フィルの第355回定期演奏会を指揮するのは古楽のスペシャリスト、鈴木秀美。古典派交響曲を並べたプログラムで本領を発揮する。
曲はハイドンの交響曲第12番と交響曲第92番「オックスフォード」、そしてベートーヴェンの交響曲第7番。傑作ぞろいのハイドンの交響曲だが、第12番に親しんでいるという方はまれだろう。番号が示す通り初期の作品で、1763年、ハイドン31歳の年に書かれている。いまだ「急─緩─急」の3楽章制がとられ、ホ長調というハイドンとしては珍しい調が採用されているのが目を引く。後の堅固な構築感に支えられた作風とは一味違ったトリッキーで冒険的な曲想に魅力がある。ホ短調のシチリアーナ風中間楽章もおもしろい。一方、第92番「オックスフォード」は成熟期の作品で、エネルギッシュで推進力にあふれた楽想や、緊張と弛緩の対比が作り出す雄大な作品世界は、後のベートーヴェンを予感させる。
そして、ベートーヴェンの交響曲第7番は古典派交響曲のひとつの到達点とでもいうべき大傑作。ベートーヴェンが交響曲の世界にもたらした熱風のようなパッションを鈴木秀美と東京シティ・フィルがどう再現してくれるだろうか。モダン・オーケストラ相手であっても可能な限り古楽的アプローチを実践するのが鈴木秀美の魅力。刺激的な一夜になるのでは。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2022年9月号より)
第355回 定期演奏会
2022.10/28(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
https://www.cityphil.jp