17世紀オランダの盲目の奏者ファン・エイクが遺した、全150曲から成る「笛の楽園」は、リコーダー奏者にとっての“聖典”。気鋭の名手として知られた江崎浩司は、世界的にも珍しい全曲録音に挑み、この第8弾で完遂へと至らしめた。民族楽器を含めた12種の笛を吹き分け、広大な響きの空間を創出。変幻自在の創意を随所に盛り込み、吹き込む息を繊細に制御すると、シンプルな構造の楽器から、いかに彩り豊かな表現が紡ぎ出されることか。はっとさせられる瞬間が、幾度も訪れる。江崎は昨年12月、50歳の若さで急逝。しかし、遺された名録音は、いつまでも人々の心を揺さぶり続ける。
文:寺西肇
(ぶらあぼ2022年8月号より)
【information】
CD『ヤコブ・ファン・エイク:笛の楽園 Vol.8/江崎浩司』
ヤコブ・ファン・エイク:「笛の楽園」より〈No.127 ローラ〉〜〈No.148 詩篇134番 主の僕らよ、こぞって主をたたえよ〉、付録 私は避ける事ができない(P.de.ヴォイス作)
江崎浩司(リコーダー/その他)
フォンテック
FOCD-9866 ¥3080(税込)