サントリーホール サマーフェスティバル 2022

現代音楽の最前線で活躍する音楽家が東京に大集結!

クラングフォルム・ウィーン(c)Tina Herzl

 毎年恒例の「サントリーホール サマーフェスティバル」。ホール開館後の1987年から続く、音楽の“現在(いま)”を紹介する、東京の現代音楽の祭典は、同時代の作品を中心に、最前線で活躍する世界各国の音楽家たちが高感度の音楽を発信してきた。

 今年の「ザ・プロデューサー・シリーズ」は、クラングフォルム・ウィーン(KFW)が担当する。1985年にベアート・フラーによって創設されたKFWは、オーストリアを拠点とする精鋭で構成される現代音楽のスペシャリスト集団。同時代の第一線の作曲家たちと親密な関係を築き、注目されるべき作曲家の数多くの新曲を世に送り出してきた。今回のコンセプトは『未来へつながる現在(いま)』。大ホールの「時代の開拓者たち」(8/22)は、戦後日本の作曲家として世界へと扉を開いた武満徹、オーストリアのゲオルク・フリードリヒ・ハース、ヨハネス・マリア・シュタウト、クロアチア出身で自身も前衛アンサンブルを創設したミレラ・イヴィチェヴィチ、ドイツで活躍する塚本瑛子の作品を取り上げる。「クセナキス100%」(8/26)では、今年生誕100年のギリシャの作曲家ヤニス・クセナキス(1922〜2001)が1969年に発表した2曲を。ちょうど「数学を駆使した書法」を究めるクセナキスが空間への関心を深めた時期で、6人の打楽器奏者のための「ペルセファッサ」は、奏者が聴衆を囲むように指示され(指示以外の形の演奏もある)、彼の音楽の強靭なダイナミズムが堪能できる。ローラン・プティの振付で初演されたバレエ音楽「クラーネルグ」は、23楽器とテープによる75分の大作。多彩な音響空間の広がりに驚かされるだろう(指揮:エミリオ・ポマリコ)。

 「ウィーンの現代音楽逍遥」と題された室内楽プログラムも興味深い。第1夜(8/23)は、KFW創設者のフラー、ジョルジュ・アペルギス、サルヴァトーレ・シャリーノ、レベッカ・サンダースらの作品にKFWのメンバーが高度な演奏能力で切り込む。第2夜(8/25)は、100年ほど前にウィーンで新たな地平の音楽を開拓した新ウィーン楽派の作品集。シェーンベルクらの代表作が室内オーケストラ(アンサンブル)編曲版でより密度の濃い音楽になるだろう。彼らの精神的支柱マーラーの歌曲「子供の不思議な角笛」の室内アンサンブル用編曲(日本初演)も注目だ。

 「テーマ作曲家」(国際作曲委嘱シリーズNo.44、監修:細川俊夫)は、2020年の来日がコロナ禍で叶わず、待望の登場となるドイツのイザベル・ムンドリー(1963〜)。ムンドリーの作品は音楽と時間・空間の関係に思索を深め、理知的で精緻な音楽構造をもつ。「オーケストラ・ポートレート」(8/28)では、ドビュッシー「遊戯」、ドイツの新鋭フィリップ・クリストフ・マイヤーの新作とともに演奏される委嘱新作、名手ニルス・メンケマイヤー独奏によるヴィオラとオーケストラのための「身ぶり(ジェスチャー)」(世界初演)が期待大(ミヒャエル・ヴェンデベルク指揮、東京交響楽団)。「室内楽ポートレート」(8/24)は、上田希(クラリネット)、成田達輝(ヴァイオリン)、山澤慧(チェロ)、太田真紀(ソプラノ)ら、日本の気鋭演奏家のエッジが効いた演奏も楽しみだ。さらに「作曲ワークショップ」(8/21)の細川とのトーク・セッションや若手作曲家からの公募作品クリニックは、ムンドリーの豊かな知性に触れる貴重な機会となるだろう。

 第32回芥川也寸志サントリー作曲賞選考演奏会(8/27)は、小野田健太の委嘱新作、作曲賞候補の大畑眞、根岸宏輔、波立裕矢の作品が、杉山洋一指揮&新日本フィルで演奏される。
文:柴辻純子
(ぶらあぼ2022年8月号より)

サントリーホール サマーフェスティバル 2022
◎ザ・プロデューサー・シリーズ クラングフォルム・ウィーンがひらく
◎テーマ作曲家 イザベル・ムンドリー
◎第32回芥川也寸志サントリー作曲賞選考演奏会【配信あり】
2022.8/21(日)〜8/28(日) サントリーホール 大ホール、ブルーローズ(小)
問:サントリーホールチケットセンター0570-55-0017
https://suntory.co.jp/suntoryhall/feature/summer2022/
※フェスティバルの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。