『ぶらあぼ』誌面でご好評いただいている海外公演情報を「ぶらあぼONLINE」でもご紹介します。海外にはなかなか出かけられない日々が続きますが、“妄想トラベル”を楽しみましょう!
[以下、ぶらあぼ2022年8月号海外公演情報ページ掲載の情報です]
曽雌裕一 編
↓それぞれの国の情報はこちらから↓
7月の日本の音楽界を賑わせた指揮者のクラウス・マケラとフランソワ=グザヴィエ・ロト。11月にはマケラはパリ管とマーラーの「復活」、ロトは手兵レ・シエクルとシャンゼリゼ劇場で同じくマーラーの「巨人」を演奏する。マケラは他にもオスロ・フィルとウィーンに客演したり、2027年に首席指揮者となることが早々に発表されたコンセルトヘボウ管でシベリウスの交響曲やモーツァルトのレクイエムを振るなど相変わらずの人気ぶり。ちなみに、ロトの名前「フランソワ=グザヴィエ」というのはスペイン語に置き換えれば「フランシスコ=ザビエル」だということにお気付きだっただろうか。何とも気高いお名前だ。
ところが、11月にはさらに多忙を極める長老指揮者がいる。ズービン・メータがそうだ。メータは、まずは、ウィーン・フィルやシュターツカペレ・ベルリンで、バレンボイム80歳記念演奏会を振る(ピアノ独奏にバレンボイム)。さらにバイエルン放送響でもバレンボイムと共演するほか、R.シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語りき」やマーラーの交響曲第5番も演奏。本来なら、この後11月下旬にはバイエルン放送響のアジア・ツアーを一手に率いるはずだったのだから、まあ元気な86歳だ。まだまだ現役でいてほしい。
さて、オペラでは、これまた日本でお馴染みのヴァイグレが振るフランクフルト歌劇場の「ニュルンベルクのマイスタージンガー」プレミエがワーグナーでは注目公演。同じワーグナーでは、ベルリン州立歌劇場でバレンボイムが振る「ジークフリート」、「神々のたそがれ」、ベルリン・ドイツ・オペラの「トリスタンとイゾルデ」、ベルリン・コーミッシェ・オーパーとハンブルク州立歌劇場の「さまよえるオランダ人」、ライプツィヒ歌劇場の「ローエングリン」、エッセン歌劇場の「タンホイザー」、バーデン=バーデン祝祭劇場での「トリスタンとイゾルデ」(クルレンツィス指揮)などコロナ禍とは思えない多彩なラインナップ。
古楽系では今月も注目はアン・デア・ウィーン劇場か…と思いきや、11月の同劇場はロッシーニ「泥棒かささぎ」をトビアス・クラッツァーの演出で上演。演奏会形式のヴィヴァルディ「タメルラーノ」の方はダントーネ指揮アカデミア・ビザンチナの定番コンビで手堅い古楽企画。同時に、ベルリン州立歌劇場で11月下旬に並ぶスピノジ指揮のモンテヴェルディ「ポッペアの戴冠」とヤーコプス指揮のヴィヴァルディ「イル・ジュスティーノ」も大変魅力的な古楽系オペラ。パリ・オペラ・コミークでのグルック「アルミード」(ルセ指揮)やテアトル・レアルのモンテヴェルディ「オルフェオ」(アラルコン指揮)も見落とせない。一方、ミンコフスキやヘンゲルブロックはそれぞれ手兵の古楽オケを率いながら、ミンコの方はシャンゼリゼ劇場でオッフェンバックの「ラ・ペリコール」、ヘンゲルブロックはバーデン=バーデン祝祭劇場でマスカーニの「カヴァレリア・ルスティカーナ」という、やや意表を突いたプログラムに登場する。
他にも、フィレンツェ歌劇場のヴェルディ「エルナーニ」(メーリ出演)、トリノ王立歌劇場のモーツァルト「ドン・ジョヴァンニ」(ムーティ指揮)など、イタリアの歌劇場にも要注目の公演が多い。リセウ大劇場のプッチーニ「三部作」は、かつてキリル・ペトレンコがバイエルン州立歌劇場でプレミエを振ったプロダクションだが、ミュンヘンよりちょっぴりキャストが良い。現代ものでは、フィルハーモニー・ド・パリでパスカルの指揮するシュトックハウゼンの「光から金曜日」が面白い。オーケストラに戻ると、サイモン・ラトルは定例のチェコ・フィルへの客演。本拠地ロンドン響では内田光子と共演。なお、ウィーン国立歌劇場でR.シュトラウス「ナクソス島のアリアドネ」を振るトーマス・グッガイスは日本ではまだ無名ながら、大変な才能を秘めた逸材として今後要注目だ。
(曽雌裕一・そしひろかず)
(コメントできなかった注目公演も多いので本文の◎印をご参照下さい)