ホアキン・アチュカロ ピアノ・リサイタル

現代ピアノ界の至宝が魅せる色彩豊かな作品たち

 1932年スペインのビルバオ生まれのホアキン・アチュカロは、59年リヴァプール国際コンクールで優勝に輝き、以来世界各地で演奏。指揮者のサイモン・ラトルからは「独特な音色をもつピアニスト」と称されている。ニキタ・マガロフからは作曲家の魂に肉薄する奏法と表現を学び、スペインの名ギタリスト、アンドレス・セゴビアからも教えを受けている。セゴビアの教えは「常に勤勉であること」。この教えをアチュカロはいまなお守り続けている。 

 アチュカロはアルベニス、グラナドスなどのスペイン作品をレパートリーの根幹に据えているが、今回はブラームス、リスト、ラフマニノフという多彩なプログラムも披露する。

 「音楽はリズムですよ。ラフマニノフもグラナドスも、リズムを理解しなければ適切な演奏はできません。長年教える仕事もしていますが、教えるときにはまず生徒たちに曲のリズムを体得させ、それが完全にからだに入ったときに楽譜を見ることを示唆する。そうやって作品に近づいていくのです」

 この精神が心に響く音楽を生む。アチュカロの演奏を聴くと魂が浄化されるような感覚を抱く。以前聴いたベートーヴェンのソナタの緩徐楽章がロマンにあふれ、この上なく響きが美しく、涙がこぼれそうになった。スペイン作品は自家薬籠中。リズムが立ち上がり、光と影が見え隠れし、情熱と哀愁が交錯する。音楽から真の活力をもらえる—そんな稀有なピアニズムである。また、あの感動に会える!!
文:伊熊よし子
(ぶらあぼ2022年7月号より)

2022.7/3(日)14:00 王子ホール
問:ヤタベ・ミュージック・アソシエイツ03-3787-5106 
https://y-m-a.com

他公演
2022.7/7(木) 鳥取/米子市文化ホール(コンサート米子0859-34-3173)
7/9(土) ミューザ川崎シンフォニーホール(神奈川芸術協会045-453-5080)
7/12(火) 札幌/ふきのとうホール(0120-12-6666)
愛知室内オーケストラ 第37回定期演奏会A
2022.7/15(金) 名古屋/三井住友海上しらかわホール(愛知室内オーケストラ052-211-9895)