【CD】日本歌曲 優しい歌たち 若やぐバリトン八十二歳/大嶺光洋&宮崎芳弥

 様々な社会経験を積みながら鍛錬を重ね、演奏活動を続けてきた大嶺光洋。歌に対するひたむきな愛情と積み重ねてきた経験が昇華された歌声は多くの人々を魅了してきた。傘寿にリリースされた前作から2年経っての今作、豊かな響きの歌声と、歌詞の意味を丁寧に伝える歌唱は健在。むしろ、よりのびやかで、歌詞の裏側にあるもの、情景といったものを“香らせる”ような歌唱が印象的である。言葉がシンプルであればあるほどそれが顕著で、中田喜直の「ほしとたんぽぽ」や木下牧子の「さびしいカシの木」など、素朴に語りかけるような作品からは特に水彩画のような情景が見えてくる。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2022年7月号より)

【information】
CD『日本歌曲 優しい歌たち 若やぐバリトン八十二歳/大嶺光洋&宮崎芳弥』

中田喜直:ほしとたんぽぽ、夏の思い出/團伊玖磨:子守歌、秋の野、花の街、ひぐらし/大中恩:ぴいぴ、ある日、幸福が遠すぎたら/湯山昭:あやめの歌、いつもの道/三善晃:秋の風、栗の実、仔ぎつねの歌、駅/木下牧子:さびしいカシの木、夕顔、月の角笛、うぐいす 他

大嶺光洋(バリトン)
宮崎芳弥(ピアノ)

コジマ録音
ALCD-9236 ¥3080(税込)