田尻洋一の自身の編曲によるベートーヴェン交響曲のピアノ独奏版。これが頗る面白い。オーケストラで普段聴こえてこないバスや内声を強調して、浮かび上がらせるのも実に新鮮だ。第7番序奏の上昇音階は盛大。第1主題トゥッティはオケのように量感がある。展開部後半の息の長い漸強から第1主題の再現に突入する箇所は、雄大な構築に興奮を禁じ得ない。スケルツォもトリオもクレシェンドの迫力が尋常でない。終楽章の主題の反復回転は凄み連発。最後はライブの興奮も手伝ってド迫力で終わる。第2番も古典的ながら、ベートーヴェンの精神が宿っていて、本当に素晴らしい。新しいCDも聴いてみたい。
文:横原千史
(ぶらあぼ2022年6月号より)
【information】
CD『ザ・ライブ I/田尻洋一』
ベートーヴェン(田尻洋一編):交響曲第2番、同第7番
田尻洋一(ピアノ)
収録:2012年2月、伊丹アイフォニックホール(ライブ) 他
BRAVO RECORDS
BRAVO-10004 ¥3300(税込)