【CD】バッハ/シューマン/雄倉恵子

 東京藝大からフライブルク国立音大に学んだ実力派ピアニスト、雄倉恵子。古典のみならず、時にポップアルバムを制作するなど、しなやかな活動を続けている。今回取り組んだのは、バッハとシューマン。モダン・ピアノによるバッハには、必要以上に拍節を強調する演奏も多いが、雄倉は最低限のバロックの作法を弁えつつ、常に推進力を帯びて流れが滞らない。そして、シューマンは時に、伸びやかな音楽創りが、大空へ羽ばたくかのよう。バッハを敬愛したシューマンの音楽に先達を感じさせるだけでなく、バッハの中にシューマンを予見する気にさせるのは、彼女ならではの魔法だ。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2022年6月号より)

【information】
CD『バッハ/シューマン/雄倉恵子』

J.S.バッハ:主よ 人の望みの喜びよ(高橋悠治編)、パルティータ第4番/シューマン:クライスレリアーナ、トロイメライ

雄倉恵子(ピアノ)

コジマ録音
ALCD-7279 ¥3080(税込)