好調コンビがブルックナー「ロマンティック」の真髄に迫る
高関健が2015年に常任指揮者に就任してから、東京シティ・フィルの評判がとにかくいい。オーケストラ・ビルダーとしての腕前が、いかんなく発揮されているようだ。
8シーズン目のオープニングとなる第351回定期は、ブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」を取り上げる。大らかな自然賛歌とも言うべき作品で、作曲家存命中から評価が高かった。ジューシーな弦、たっぷりとした金管のコラール、小鳥のようにさえずる木管、ホルンの狩の信号など、オーケストラ芸術の醍醐味が満載だ。
高関&東京シティ・フィルはこれまでに1、3、5、8番とブルックナーに継続的に取り組んでおり、とりわけ大曲は取り上げにくいコロナ禍での第8(20年8月)、第5(21年6月)はCD化され高い評価を受けている。スコアに真摯に向かい合う高関の姿勢は、とりわけブルックナーのような作曲家と相性がよいようだ。「ロマンティック」は異稿も多いが、第2稿をコーストヴェットが校訂した最新版という今回の選択にもこだわりが表れている。
前半は日本の作曲界に大きな足跡を残した大家・三善晃の出世作「交響三章」。吹奏楽編曲版でご存知の方も多いだろうが、ほのぐらい情熱が激しく発火していくプロセスを描いたこの音の緻密なドラマは、ぜひオーケストラ全曲版で味わってほしい。ブルックナーとテイストは異なるとはいえ、初期三善作品の濃厚なロマンティシズムも、一度はまるとやみつきになる中毒性がある。選曲も絶妙だ。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2022年4月号より)
第351回 定期演奏会
2022.4/22(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール
問:東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002
https://www.cityphil.jp