沼尻竜典(指揮) 神奈川フィルハーモニー管弦楽団

音楽監督就任を告げる重厚なプログラム

 新たに沼尻竜典を音楽監督に迎える神奈川フィルが、就任披露公演として定期演奏会第376回を開催する。沼尻の任期は2022年4月から25年3月までの3年間。

 記念すべき第一歩を飾るプログラムはヘンツェのピアノ協奏曲第1番とブラームスの交響曲第1番の組み合わせ。それぞれ19世紀と20世紀のドイツにおいて、交響曲や協奏曲といった伝統的なフォーマットを用いながら新たな地平を切り開いた作曲家が並ぶ。

 ヘンツェのピアノ協奏曲第1番では、欧州を拠点に国際的な活動を展開する児玉麻里がソリストを務める。同曲は1950年、24歳のヘンツェによって書かれた若き日の作品。2013年に沼尻指揮東京フィルと小菅優によって日本初演されており、今回は独奏者とオーケストラを変えてふたたび沼尻がとりあげることになる。曲は伝統的な急─緩─急の3楽章で構成され、各楽章は「アントレ」「パ・ド・ドゥ」「コーダ」とバレエにちなんだ題を持つ。ピアノとオーケストラがペアになった舞踊と見立てることもできるだろう。晦渋な作品ではまったくないので、幅広い聴衆が楽しめるはずだ。

 一方、ブラームスの交響曲第1番はオーケストラにとっての最重要レパートリーのひとつ。これから沼尻と神奈川フィルのコンビがどんな音楽を作ってゆくのか、その力強い開幕宣言となるような記念碑的な名演を期待したい。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2022年3月号より)

定期演奏会 第376回
2022.4/23(土)14:00 神奈川県民ホール
問:神奈川フィル・チケットサービス045-226-5107 
https://www.kanaphil.or.jp