親密なアンサンブルの理想形を知る思い。いずれも国内屈指の名手で、個人的にも親しいという川田知子と須田祥子による二重奏は、主張をぶつけ合うのではなく、丁寧に溶け込ませて作品の世界を作り上げる。各自の個性はたしかに出ているのに、音色の統一は万全、どちらの音かわからない瞬間さえある。「パッサカリア」「スターライト」では超絶技巧の応酬も楽しめるが、「2人で一体」の精神はいささかも変わらない。モーツァルトの名作、シューベルトの名編曲における、豊かな響きの美しく心地よいことといったら。シベリウスとフックスの佳品もうれしい発見となるはず。
文:林昌英
(ぶらあぼ2022年3月号より)
【information】
CD『スターライト ヴァイオリンとヴィオラの二重奏/川田知子&須田祥子』
ヘンデル(ハルヴォルセン編):パッサカリア/コレッティ:スターライト/モーツァルト:二重奏曲 ト長調/フックス:二重奏曲 op.60-1,2,6,7,12/シベリウス:二重奏曲 ハ長調/シューベルト(ウォルフ編):野ばら、魔王、アヴェ・マリア、菩提樹
川田知子(ヴァイオリン)
須田祥子(ヴィオラ)
マイスター・ミュージック
MM-4504 ¥3300(税込)