髙木凜々子(ヴァイオリン)

人気の若手奏者、待望のハクジュ・ライブが実現!

(c)Naoya Yamaguchi

 素晴らしい響きと快適なリスニング環境で、演奏家と聴き手の双方から絶大な信頼を集めているHakuju Hall。長年続いているリクライニング・コンサートは、ゆったりとした座席で音楽を楽しむ人気のシリーズで、まさに「極上の1時間」を堪能することができる。

 今回登場するのは、進境著しい若手ヴァイオリニストの髙木凜々子。2017年バルトーク国際コンクールで第2位と特別賞を受賞、その後は内外のオーケストラと共演を重ねる一方、リサイタルなども活発に開催してきた。Hakuju Hallには何度も観客として訪れ、その音響に魅了されているものの、ステージに立つのは初めてだという。

 「このホールの豊かな響きを信じて弾くことができるので、思い切った表現が可能になると思います」

 国内外で豊富な演奏経験をもつ髙木は、Hakuju Hallでの初舞台に期待しつつ、内容の濃いプログラムを組んだ。

 「ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第3番は、彼の後年の作品に表れる重厚感のようなものが感じられる作品ですが、今回、私は冒頭の部分を明るめに弾き始めようと考えています。シャンパンの栓をパッと開けるようなイメージ。コンサートを華やかに始めたいのです」

 コロナ禍で多くの演奏会がキャンセルになる中、SNSなどを駆使して常に前向きな姿勢をファンに向けて発信してきた髙木らしい心配りだ。

 2曲目に置いたのはスイスの作曲家、エルネスト・ブロッホの作品。
 「『ニーグン』は初めて挑戦する曲です。3つのパートからなる『バール・シェム』の中の1曲で、ニーグンという聞きなれない言葉は“即興”という意味。冒頭部分の即興性が素晴らしい作品で、中低域から高音までの音色の変化をお聴きいただきたいと思います」

 クライスラーの「ウィーン奇想曲」「愛の悲しみ」「愛の喜び」は誰もが知っている名曲。
 「作曲家自身の録音が残されているので、ヴァイオリン奏者にとっては弾きづらい曲ですが、私にしか表現できないクライスラーをぜひ聴いていただきたいと思い、強気でプログラムに入れました」

 ラストはショーソンの「詩曲」、原曲はオーケストラ伴奏付きの大作である。共演はピアノの河地恵理子。
 「この作品に描かれる人間の強さ、優しさ、悲しさといった感情の細やかな動き、さらに内声部の分厚い響きや幅広いダイナミクスなどが、Hakuju Hallの空間だからこそ表現できると考えています」

 公演は昼と夜の2回。心地よい空間で、極上の音楽に包まれる時間を過ごしてみたい。
取材・文:白柳龍一
(ぶらあぼ2022年2月号より)

第165回 リクライニング・コンサート 髙木凜々子 ヴァイオリン・リサイタル
2022.3/29(火)15:00 19:30 Hakuju Hall
問:Hakuju Hall チケットセンター03-5478-8700  
https://hakujuhall.jp