フアンホ・メナ(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団

南欧の名匠が描くスペインの“光と影”

 スペインの名指揮者フアンホ・メナが日本フィルの指揮台に初登場を果たす。メナはBBCフィルハーモニック首席指揮者やスペイン・ビルバオ交響楽団芸術監督ほかを歴任した実力者。ベルリン・フィルをはじめ、欧州の主要オーケストラへの客演も多い。日本にもラ・フォル・ジュルネ等で来日しているので、なじみのある方も多いだろう。

 そのメナが日本フィルとの共演にあたって用意したのは、ひとひねりのあるスペイン・プログラム。フォルトナーの歌劇《血の婚礼》組曲、トゥリーナの「カンシオーネス形式の詩」「希望の聖母への祈りの形式によるサエタ」「三部作」より第1曲〈ファルッカ〉、ファリャのバレエ音楽「三角帽子」という意欲的なラインナップだ。トゥリーナとファリャではメゾソプラノのクララ・モウリスが独唱を務める。

 フォルトナーは20世紀ドイツの作曲家だが、代表作である歌劇《血の婚礼》はスペインの劇作家ガルシア・ロルカの悲劇をオペラ化した作品。花婿と花嫁、そのかつての恋人らを登場人物とした救いのない物語が題材だ。このオペラをもとにした緊迫感あふれる組曲が演奏される。

 トゥリーナとファリャは20世紀前半のスペインを代表する作曲家。ともにアンダルシア地方の民俗音楽を創作力の源泉として、土地に根付いた作品を生み出した。「三角帽子」で描かれるのは粉屋と女房に横恋慕する代官。男女の三角関係を描いているのは《血の婚礼》と同じだが、こちらはハッピーエンドの楽しい音楽だ。スペインを表側と裏側から見るようなプログラムになっている。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2022年2月号より)

*出演を予定していた指揮のフアンホ・メナ、メゾソプラノのクララ・モウリスは、新型コロナウイルス オミクロン株に対する水際措置の強化により、出演を見合わせることとなりました。
代わって指揮は広上淳一が出演いたします。また、以下の通り曲目を変更して開催いたします。(1/24主催者発表)


《変更後プログラム》
ラヴェル:スペイン狂詩曲
ラヴェル:ラ・ヴァルス
ラフマニノフ:交響曲第3番 イ短調 op.44

第738回 東京定期演奏会〈春季〉 
2022.3/4(金)19:00、3/5(土)14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 
https://japanphil.or.jp