ダイナミックな“男声デュエット”をお楽しみください
日本が誇るバリトンとして、国内外で活躍中のベテラン、堀内康雄。7月にはテノール西村悟とジョイント・コンサートを開く。第一人者が「後輩に胸を貸す」意気込みを尋ねてみた。
「西村さんはいま最も輝いている若手ですね。美しく、どこまでも伸びるテノールは必聴でしょう。今回は2人でヴェルディやプッチーニの名アリアをたくさん取り上げますし、イタリア近代歌曲やオペラの二重唱も歌います。また、河原忠之さんのまるで“3D”のような立体的なピアノ演奏も、鮫島有美子さんの司会も凄く楽しみですね」
1994年ヴェネツィアで《ラ・ボエーム》に出演しオペラ・デビューを飾った堀内。輝かしいキャリアを自ら振り返ってみて。
「幼少時にフルートを習いましたが、歌は慶応大学のグリークラブに入ってから始めました。でも、本格的に『声楽』に取り組んだのは企業に就職後1年経ってからです。当時から付き合っていた家内がピアニストで、精神面でも僕を引っ張ってくれました。留学先のミラノ・ヴェルディ音楽院ではピアノや和声でも絞られましたが、そのうちに、2週連続で同じ授業を欠席できないという校則を守るか、フェニーチェ座で決まったショナール役を取るかの選択になって、迷わず後者を選び音楽院は中退に。でも良い決断だったと思っています…。欧州各地で歌ってきましたが、日本に長くいる時でも、発声や歌のスタイルを見失わないよう、初心を忘れずにいたいです」
その堀内が、いま考えるヴェルディの個性とは?
「ヴェルディ・バリトンに必要なのは、何より、声質・音量・発音・表現力・情熱の5つですが、いまの僕が一番肝心と思うのは、実はフレージングなんですよ。ヴェルディを歌うなら、人物像にどうやって現実味を持たせられるかが一つのテーマですが、その一方で、レガートが滑らかで美しく、しかも極めて男性的でなければなりません。僕の声がそれに合致するかどうかは知りませんが(笑)、でも、曲負けしないよう精一杯歌っています!」
なお、今回はビゼー《真珠とり》の二重唱も披露の予定。フランスものでも定評ある堀内の抱負は?
「求められるフレージングがイタリアものとは違いますね。鼻母音やR音の処理に的確なタイミングが必要で、より繊細に当たらねばと思います。イタリア語のようにはゆかない“もどかしさ”がまた美しいのですよ。あと、今回は男声ばかりですが、オペラの主役はソプラノとテノールと言われながらも、男声デュエットも最近はリクエストが多いですし、ご満足いただけると思います。ご来場お待ちしています!」
取材・文:岸 純信(オペラ研究家)
(ぶらあぼ + Danza inside 2014年7月号から)
堀内康雄&西村悟 ジョイント・コンサート
7/15(火)13:30 東京オペラシティ コンサートホール
問:ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040
http://www.japanarts.co.jp