辻彩奈(ヴァイオリン)

フランスの俊才とのデュオで生まれる新鮮な魅力

(c)Makoto Kamiya

 2016年、モントリオール国際音楽コンクール優勝後、目覚ましい活躍を続けるヴァイオリニスト・辻彩奈。今もフランスと日本の音楽大学に籍を置きながら、両国を拠点に活動する彼女だが、「2020年以降は海外のソリストの代役で初挑戦の協奏曲を演奏する機会が増加」。「2年くらいかけて協奏曲のレパートリーを増やしていく計画を立てていた」点とも合致し、音楽的なキャパシティを拡大している。

 そうした中、来る2月にはフランスのピアニスト、レミ・ジュニエとのデュオ・リサイタルを行う。ジュニエは13年のエリザベート王妃国際コンクールで20歳にして第2位を獲得した俊才。日本公演でも清冽なピアニズムで魅了している。

 「ナントのラ・フォル・ジュルネに出演した際、彼が私のコンサートを聴きに来てくれたんです。そこで『一緒にやれたらいいね』との話になって、この初共演が実現しました。レミの演奏は柔らかく真摯。これまで多かったベテランのピアニストの方との共演では、もちろん教えられることが多いのですが、同世代の方とは一緒に作り上げていく妙味があるので、共演するのがとても楽しみです」

 モーツァルトの「ソナタ第40番」K.454、フォーレの「ソナタ第1番」、ラヴェルの「高雅で感傷的なワルツ」「ソナタ第2番」、サラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」という、辻としては新鮮なプログラムも目を引く。

 「ナントでレミのモーツァルトを聴いて、ぜひ一緒に弾いてみたいと思ったので今回まずそのソナタを入れました。そしてフランス人演奏家とフランスものを弾こうと。今回は完全に彼との共演を意識したプログラムです。ピアニストは皆音色も違いますし、ガンガンくる人も様子を見る人もいますから、『そうくるならこうしよう』と私の曲の捉え方も出す音も相手次第で変わってきます。今回はこの初めての共演ならではの楽しみがありますね」

 モーツァルトのソナタには特に力が入っている。

 「モーツァルトは一番好きな作曲家。これまで多くのソナタを弾いてきましたが、K.454はスケールが大きく綺麗な曲で、特に第2楽章は美しい。しかもモーツァルトのソナタはピアノが主体なので、レミの演奏も聴きものです」

 フォーレのソナタ第1番は初めて弾くという。

 「これもすごく綺麗で、ずっと弾きたいと思っていた曲です。これまでラヴェルなどのソナタを弾いてはいますが、フランスものは積極的に取り上げてきませんでした。しかしフランス人のエマニュエル・シュトロッセさんとフランクのソナタを共演して、独特の音色や空気感に感動し、身を任せて弾くことができたんです。そこでレミと演奏して自分のレパートリーにしたいと思い、フォーレを入れました」

 もちろん「第2楽章がブルースで第3楽章は華やか」なラヴェルのソナタも含めたフランスものは、同国の大御所レジス・パスキエに学ぶ辻の新たな色合いに期待がかかるし、「最後は皆が知っている曲を楽しんでいただこうと」選んだ「ツィゴイネルワイゼン」も、彼女は意外にこうしたショーピースの演奏が少ないので要注目だ。

 東京公演の会場が「弾きやすくてとてもよく響く」と気に入る浜離宮朝日ホールである点も絶好。ここは20代のフランスの俊英と組んだ辻彩奈の新鮮な音楽を満喫したい。
取材・文:柴田克彦
(ぶらあぼ2022年1月号より)

辻彩奈(ヴァイオリン)&レミ・ジュニエ(ピアノ)デュオ・リサイタル
2022.2/23(水・祝)14:00 浜離宮朝日ホール
問:朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990
https://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/