In memoriam 牧阿佐美

Asami Maki 1934-2021

 舞踊家・振付家として日本のバレエ界を長年牽引してきた牧阿佐美さんが10月20日、大腸がんのため死去した。87歳だった。

 東京都出身。日本バレエ界の草分けである舞踊家、橘秋子の長女として生まれ、4歳からバレエを始める。1954年に米国に留学、世界的なバレリーナ、アレクサンドラ・ダニロワ、イゴール・シュヴェッツォフらに師事した。帰国後の56年、母とともに「牧阿佐美バレヱ団」を設立して数多くの作品で主演を務め、68年には黛敏郎の曲を用いた『ブガク』などを発表し、振付家デビュー。團伊玖磨や芥川也寸志ら日本を代表する作曲家と共働し、創作にも尽力した。その後も多くの作品を手がけたが、なかでも2016年、同バレエ団創立60周年の折に、母の代表作『飛鳥物語』(1957年初演、振付・台本:橘秋子)を牧自身が新制作した改訂版『飛鳥』の上演は大きな話題となった。
 
 1971年、母の死去を契機に現役を引退、その後は後進の育成と指導に専念した。日本を代表するダンサーを数多く育てる一方、ジョージ・バランシン、ローラン・プティら巨匠の振付作品を次々と国内初演し、世界の最先端を紹介し続けた。
 1999年から2010年まで新国立劇場舞踊芸術監督、01年からは同劇場バレエ研修所所長。紫綬褒章(1996)、フランス芸術文化勲章シュヴァリエ(2004)など受章多数。08年には文化功労者に選ばれた。