アンコール・ピースを集めたアルバムとして出色の一枚だ。チェロの名匠、山崎伸子が継続してきたリサイタルの10年にわたる録音から、主に独仏露の名品、ほぼ全曲ゆったりと旋律美を味わえる17曲が選ばれた。山崎の奏でる、木の香りが漂うような深い音色、長い呼吸で歌われるメロディのなんと魅力的なことか。ことにドイツ作品にあらわれる詩情、余情には涙腺が刺激される思いで、いつまでも浸っていたくなる。また、曲順は演奏年次順ではなく、7人の共演ピアニストごとにまとめられていて、個性的な共演者たちとの出会いを大切にする山崎のスタンスがよく伝わってくる。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2021年11月号より)
【information】
CD『アンコール・アンコール/山崎伸子』
ブラームス:メロディのように/シューマン:トロイメライ/J.S.バッハ:アダージョ/ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女/ラフマニノフ(ロストロポーヴィチ編):ヴォカリーズ/カザルス:鳥の歌 他
山崎伸子(チェロ) 長岡純子 ヴァディム・サハロフ ヴィレム・ブロンズ 加藤洋之 清水和音 野平一郎 小菅優(以上ピアノ)
収録:2007年12月、津田ホール(ライブ) 他
ナミ・レコード
WWCC-7954 ¥2750(税込)