【CD】藤倉大:箏協奏曲/LEO

 藤倉大は、その楽器にできることをゼロベースで洗い出し、演奏者と徹底的にコミュニケートし、すべてを理解した上で「忘れる」。ゆえにできあがる作品は音楽的に無理がなくかつ新鮮なのだが、そのひとつの極みがこの「箏協奏曲」と言いうる。若き箏の演奏家であるLEOから委嘱された本作は、いわゆる純邦楽において耳にするこの楽器の様相とはかなり趣を異にし、「ちらし」や「うち爪」といった箏特有の奏法を駆使しながら、今まで聴いたことのないような音響をこの楽器から引き出す。オケは極めて抑制されたやり方でこの箏と親密な対話を繰り広げ、これはまさに藤倉にしか書けない傑作だろう。
文:藤原 聡 
(ぶらあぼ2021年11月号より)

【information】
CD『藤倉大:箏協奏曲/LEO』

藤倉大:箏協奏曲、つき、芯座、竜

LEO(箏)
鈴木優人(指揮)
読売日本交響楽団

収録:2021年4月、サントリーホール(ライブ) 他
日本コロムビア
COCQ-85538 ¥3300(税込)