チック・コリア(ピアノ)

ソロでは常にサプライズの要素を入れたいと思っているんだ

 ストレートなリアル・ジャズからエレクトリックを大々的に導入したフュージョンまで、多彩な編成による斬新なパフォーマンスで常に聴き手に驚きを与え続けてくれる巨匠、チック・コリア。そんなジャズ・レジェンドが、3月にオープンしたばかりのよみうり大手町ホールに、ピアノ・ソロとゲイリー・バートンとのデュオで登場する。
 「ソロ・ピアノはチャレンジであり、また自分の音楽をオーディエンスに伝えられるベストな方法だと考えている」というチック。今回の公演ではどんなチャレンジをきかせてくれるのか。
「ソロでは、あまり細かく決めずに本番に挑むのが好きなんだ。常にサプライズの要素を入れたいとも思っている。観客に対しても、自分にとってもね。それから、このツアーに合わせて新しいソロ・アルバムをリリースするんだ」
 一方ゲイリー・バートンとのデュオは、名盤の誉れ高い『クリスタル・サイレンス』以来40年以上にわたって彼の音楽の中心的位置を占めてきたフォーマットの一つ。
「どうしてそんなに長いあいだ共演してきて新鮮さを保てるのかって? それは人生における秘密だね(笑)。それは冗談だけど、僕たちは単純に音楽を創るのが大好きで、新しいパフォーマンスやレコーディングのたびに、できるだけ喜びや興奮に満ちたものにしようとしているだけだよ。今回は2012年にゲイリーと作った『ホット・ハウス』の中から数曲、それから過去のアルバムからの曲も演奏するつもり。またコンサートの後半ではハーレム・ストリング・カルテットとの共演も予定しているよ」
 現在72歳という年齢が信じ難い、エネルギッシュな創造性。その若々しさの秘訣はどこにあるのだろう。
「またもや秘密を明かさなきゃいけないのかい(笑)。いや、実際のところは秘密なんかなくて、体調管理に気をつけて、好きなことをできるだけ楽しもう(fun)としているだけ。ただ、僕の考える“fun”とは、自分のしていることに対して本当にふさわしくなれるための“努力を楽しむ”ことなんだけどね」
 最後に日本のファンへのメッセージをきいた。
「1967年にスタン・ゲッツ・カルテットで初来日して以来今日に至るまで、ずっと僕の音楽に関心を持ち続けてくれるファンにお礼をいいたい。日本は、訪れるのも、そしてもちろん演奏するのも世界で最も好きな国の一つ。よみうり大手町ホールでのオープニングのために来日できること、そしてみなさんに会えることを本当に楽しみにしています」
取材・文:藤本史昭
(ぶらあぼ2014年5月号から)

チック・コリア ピアノ・ソロ・コンサート★6月16日(月)、17日(火)、18日(水)
チック・コリア&ゲイリー・バートン★6月20日(金)、21日(土)、22日(日)
会場:よみうり大手町ホール
問:読売新聞文化事業部 03-3216-8500
http://yomi.otemachi-hall.com

【CD】
『チック・コリア/ポートレイト』 
UCCO-1143〜4