垣岡敦子(ソプラノ)

愛をテーマに歌います

 2000年に渡伊し、ミラノ音楽院で研鑽を積みつつ、欧州で数々のステージに立ち好評を博している垣岡敦子。2009年の帰国後は新作オペラで主役を務めるなどして注目を集め、2012年よりシリーズ化しているコンサート『Amore〜愛の歌』も好評。そんな彼女が今年も6月26日に紀尾井ホールでリサイタルを開催する。
「新作CDは過去2回の愛をテーマにしたコンサートでお客さんの反応がよかった曲を中心に構成しました。リサイタルでも客席との距離感をなくして皆さんと気持ちをひとつにしたい。衣装や照明にもこだわって、オペラが初めての人でも緊張せずに楽しめる雰囲気づくりを目指しています。音楽って人の心に何かを与えることだと思うから」
 伸びやかで明るく柔らかい響きにも恵まれた声。現在の声質は様々な人気作品のヒロインをカヴァーできる抒情的で適度に重いソプラノ・リリコ(プーロ)だが、ここに落ち着くまでの道のりは平坦ではなかった。
「学生時代には超絶技巧の軽やかなコロラトゥーラの役柄ばかり歌っていましたが、バリトン歌手のジョルジュ・ロールミ先生と出会ってからもう少し厚みのあるリリコ・レッジェーロに目覚め、ミラノでスカラ座アカデミアのヴォイストレーナー、ビアンカマリア・カゾーニ先生のアドバイスでリリコに。元オペラ歌手でもある彼女に“敦子は劇場向きの声を持っている”と言われたことを励みに、力まず無理のない発声を心がけています」
 リサイタルではカッチーニの「アヴェ・マリア」からプッチーニの〈私のお父さん〉などイタリアもののアリアに「花は咲く」のような日本の歌も予定。アルバム収録のマスネ《エロディアード》のようなフランスものにも期待したい。
「ドラマティックなイタリア・オペラも好きですが、歌詞の中に世界がある繊細な歌曲も大切なレパートリー。しゃれた音色のフランスものも素敵…いつの日かマスネのオペラを歌うのが夢です。日本の歌はお父さんと一緒に過ごす時間の贈り物として昨年から神楽坂のTheGLEEで始めた『父の日コンサート』でもたっぷりと歌います。いちばん好きな作曲家は、愛憎と欲望が渦巻く人間らしいドラマが現代人にもリアルなプッチーニ。昔、堤俊作先生に『将来必ず《蝶々夫人》を歌う声になる』と言われて、今では《トスカ》も歌えるようになりましたが、録音はもう少し熟してから。歌と愛に生きる究極のヒロインを演じるためには人生経験の重みも必要ですものね」
取材・文:東端哲也
(ぶらあぼ2014年6月号から)

ソプラノ・リサイタル★6月26日(木)・紀尾井ホール
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父の日コンサート★6月15日(日)・神楽坂/TheGLEE
問:TheGLEE事務局 03-5261-3124