シリーズ・ラストは池辺作品の世界初演を交えて
結成から25周年を迎えた、ヴァイオリンの沼田園子とピアノの蓼沼(たでぬま)明美による「ファイン・デュオ」。そんな節目となる今年、2012年から取り組んできたベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ全曲演奏シリーズも第5回をもって、いよいよ完結を迎える。
東京芸大大学院などに学び、水戸室内管弦楽団をはじめ主要オーケストラでソリストやゲスト・コンサートマスターとして国内外で活躍する沼田。そして、蓼沼もやはり東京芸大大学院などを経て、ロンドンで研鑽を積み、国内外の巨匠たちと共演を重ねる。高校時代からの同級生で、気心の知れた沼田と蓼沼は、1987年にマリア・カナルス国際コンクールのヴァイオリン・ピアノ二重奏部門で第2位に。以来、常設デュオならではの音楽の愉しみを聴衆に伝え続けている。
そんな二人は2004年から7年を費やし、ベートーヴェンのソナタ全曲録音を完成。これを記念したライヴでの全曲シリーズは、3年を経て大団円へ。最終回では、中期の“傑作の森”への扉を開く第4番と、「生への強い肯定感をより身近に感じつつ、深い喜びをもって演奏している」と二人が語る第9番「クロイツェル」を取り上げる。
そして、二人がライフワークと位置付ける邦人作品から、武満徹「妖精の距離」と、池辺晋一郎への委嘱新作「顫(ふる)へたる身の舞踏」を。画家の村山槐多の詩に触発された新作について、池辺は「G線上で顫えるヴァイオリンの音色が、僕の脳裏で鳴り続けた。それをすくい取るのが、すなわち作曲だった」とのコメントを寄せている。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2014年6月号から)
★6月14日(土)・横浜みなとみらいホール(小)
問:横浜みなとみらいホールチケットセンター 045-682-2000
http://www.yaf.or.jp/mmh