今年3月に惜しくも逝去した遠山慶子のライブ録音。夫である故・遠山一行らが創始した草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァルでのリサイタル後半で、ショパンの青年期から最晩年までの13作のマズルカを演奏している。なんとも魅力的なマズルカが続く。淡く滲み合う響き、情念の強さを感じさせるアタック、移ろいゆく心模様を描く音色変化と自然な揺らぎが、一作ごとに刻まれている。とりわけ最後のマズルカop.68-4は翳りと光の柔らかな交替が繊細なグラデーションを描く。長く続く会場の拍手も印象的。録音プロデューサー井阪紘による敬愛にあふれたノートにも着目したい。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2021年10月号より)
【information】
CD『ショパン:マズルカ集/遠山慶子』
ショパン:4つのマズルカop.6、5つのマズルカop.7-3〜5、4つのマズルカop.17-3,4、3つのマズルカop.63-2、4つのマズルカop.67-2,4、4つのマズルカop.68-4
遠山慶子(ピアノ)
収録:2019年8月、草津音楽の森国際コンサートホール(ライブ)
カメラータ・トウキョウ
CMCD-25047 ¥2750(税込)