第25回 京都の秋 音楽祭

味わい深いクラシックの調べが古都に充ちていく

 四季折々に異なる魅力を纏う古都・京都にあって、最も豊かな色彩に恵まれるのが秋。日を重ねるごとに表情を深める紅葉を背景に、麗しいハーモニーを味わう「京都の秋 音楽祭」が、今年で四半世紀の節目を迎える。9月12日から11月23日までの会期中、国内外の第一線で活躍する名手たちが、会場の京都コンサートホールに集い、21公演を開催。コロナ禍を吹き飛ばすような、響きの宇宙を創り上げる。

 地元が誇る精鋭集団・京都市交響楽団が、音楽祭の幕開けを告げる「開会記念コンサート」。今回は大友直人指揮で、没後100年を迎えたサン=サーンスをテーマに。宮田大をソリストに据えたチェロ協奏曲第1番、冨田一樹(オルガン)を迎えての交響曲第3番「オルガン付き」と、世界的な登竜門で日本人初優勝の快挙を成し遂げた俊英と“響宴”する(9/12 完売)。

 関西の8つの音楽大学の学生が、ひとつのハーモニーを織り上げる「関西の音楽大学 オーケストラ・フェスティバル IN京都コンサートホール」も、やはり節目の第10回に。今回は、秋山和慶指揮でベートーヴェンの交響曲第7番とドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」、2つの傑作に対峙する(9/19)。

 第一次世界大戦、ロシア革命、スペイン風邪によるパンデミックを目の当たりにしたラヴェルが、19世紀の華やかなウィンナ・ワルツを振り返った時、そこに見えたものとは? その“回答”である「ラ・ヴァルス」と、その共鳴として、名コレペティトゥーアで作曲家の三ッ石潤司が書いた新作の世界初演を軸とするステージ。ピアノの三輪郁やヴァイオリンの石上真由子ら名手の演奏、伊東信宏のレクチャーで、聴衆を時空を超える旅へいざなう(10/2)。

 そのラヴェルと同じく、20世紀初めの時代の波に翻弄され、今年で没後50年を迎えたストラヴィンスキー。その問題作「兵士の物語」を、関西で音楽を学ぶ学生たちで構成された室内アンサンブルが、広上淳一の指揮、狂言師の茂山あきらの朗読で上演する。コロナ禍で世界中が苦境に立たされている今。若者たちと2人の名匠が、あえて「真の幸福とは」との、究極の問いを世の中へ投げかける(10/16)。

 そして、ドイツの“いぶし銀”とも称される名ピアニスト、ゲルハルト・オピッツ。コロナ禍により中止となった昨年公演から、満を持しての登場となる今年は、得意の「オール・ブラームス」。「2つのラプソディー」「7つの幻想曲」「4つの小品」とソロ作品に加えて、関西の若手奏者による「クァルテット澪標」との顔合わせで「ピアノ五重奏曲」を披露する(11/13)。

 「ショパン! ショパン!! ショパン!!!」は、世界的な登竜門で実績を重ねた3人の俊英ピアニストが、デリック・イノウエ指揮の京都市交響楽団と共演し、“三者三様”の快演を聴かせるステージ。實川風が「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」、福間洸太朗が協奏曲第2番、ニュウニュウが同第1番を弾く(11/20)。

 大ホールのみならず、アンサンブルホールムラタでも、興味深い公演が目白押し。京都市交響楽団のメンバーによる「京都 ラ ビッシュ アンサンブル」は“生誕251周年記念”と題して、ベートーヴェンを特集(10/11)。同じく「京都しんふぉにえった」は、生誕100年を迎えたピアソラの「ブエノスアイレスの夏」ほかを(10/30)。これら2つのステージは“編曲”が共通テーマとなる。そして、長唄の名匠・杵屋勝七郎がスーパーバイザー・演出・三味線を務め、能の林宗一郎と狂言の茂山逸平が“競演”する「古典芸能で辿る義経・弁慶旅の追憶」(11/23)。我が国が誇る古典芸能が同時に味わえる舞台は、古都の芸術祭ならではだ。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2021年9月号より)

2021.9/12(日)〜11/23(火・祝) 京都コンサートホール
問:京都コンサートホール075-711-3231
https://www.kyotoconcerthall.org