デビューアルバムは、歌心あふれるイタリアゆかりの小品を集めて
期待のピアニスト、小林侑奈が4月21日、デビューCD『Dolce Felice(ドルチェ・フェリーチェ)』をリリースする。
「CDを出すことは私にとって目標でもあり、憧れでもありました。師事している黒田亜樹先生から、ターニング・ポイントとなる出会いを数多くいただいていて、このCD録音もそのひとつです。どういう内容にするかすごく悩みましたが、10年以上にわたって勉強してきた大好きなイタリアをテーマにしてみました」
言葉通り、収録曲にはイタリア由来の楽曲が中心に並ぶ。J.S.バッハ=ヴィヴァルディ「シチリアーノ」、レスピーギ「6つの小品」より、同「シチリアーナ」、リスト「慰め第3番」、同「ペトラルカのソネット第123番」、フォーレ「夢のあとに」、タールベルク「ベッリーニの《ノルマ》より〈清らかな乙女よ〉」、プロコフィエフ「ロミオとジュリエット」より、ベリオ「水のピアノ」、そしてリゲティ「フレスコバルディへのオマージュ」ほか。
なるほどイタリア由来の作曲家や珠玉の小品が詰め込まれた、煌めく宝石箱のようなディスクである。9歳の時、クラクフ管とワルシャワで共演した小林は、桐朋学園大学卒業後に渡欧。ミケランジェリの高弟ブルーノ・メッツェーナに師事してペスカーラ音楽院を首席で修了するなどイタリアを中心に研鑽を積み、ヨーロッパでの国際コンクールに数多く優勝、同時にシャネル・ピグマリオン・デイズ・アーティストに選出されるなど国内外で積極的な活動を続けてきた。
「色鮮やかなイタリアのイメージや世界観が香り立つように、CDはバッハに始まり、歌心もあってとても共感できるレスピーギ、またフォーレはイタリアでは著名なフィオレンティーノによる編曲で、その貴重な楽譜を入手することができました。絵本のページをわくわくしながら1枚ずつめくるような、そして短編小説の主人公になったような感覚で聴いてくださればと思っています」
ボーナス・トラックは、ショパン「ノクターンop.9-2」。オリジナルに小林自身が手を加え、華麗で輝かしいノクターンに生まれ変わっているが、これが実にいい。レコーディングは五反田文化センターでの2日間。
「大変でしたけれど、ピアノのコンディションも最高にしていただきましたし、録音してプレイバックを聴くたびに細かいところを修正しながら進化していく感じで、最終的にはとても楽しくできました。歌うようにピアノと対話し、歌のようにピアノで演奏することこそ、私にとって最大の目標です。ですから大きな作品をガツンと弾くよりは、作品に潜んでいる旋律線を豊潤に歌い上げたいし、それを自分の魅力にしていけたらと思っています」
9月4日にはHakuju Hallでリリース記念リサイタルが予定されている。
取材・文:真嶋雄大
(ぶらあぼ2021年5月号より)
小林侑奈 ピアノ・リサイタル
2021.9/4(土)14:00 Hakuju Hall
5/1(土)発売
問:スタジオ・ムジカ090-1126-0077
https://www.yunakobayashi.com
SACD『Dolce Felice』
アールアンフィニ
MECO-1062 ¥3300
2021.4/21(水)発売