長きにわたり山響の音楽監督の責を果たし、2019年からは芸術総監督となった飯森範親が、ミサ第3番に取り組んだ。たっぷりとした量感のあるオケに、勢いのある合唱(山響アマデウスコア)が絡み、壮麗な音楽が繰り広げられる。この曲にはウィーンに出てくる前、オルガニストとしてリンツの大聖堂に勤めていた頃の、初期ブルックナーの音楽性がストレートに表れているが、躍動感あふれる飯森のリードはこういう素直な作品でひときわ映える。またその快活な運びの中、所々で姿を現す独唱陣(全員東北出身)も清々しさを湛えている。地域ゆかりのアーティストでこれだけの公演を実現したのが頼もしい。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2021年5月号より)
【information】
SACD『ブルックナー:ミサ曲第3番/飯森範親&山響』
ブルックナー:ミサ曲第3番
飯森範親(指揮)
山形交響楽団
梅津碧(ソプラノ) 在原泉(アルト)
鏡貴之(テノール) 鈴木集(バリトン)
山響アマデウスコア
オクタヴィア・レコード
収録:2020年2月、山形テルサホール(ライブ)
OVCL-00730 ¥3520(税込)