今年2月、山田和樹が首席客演指揮者を務める読響とのコンビで、生気みなぎるマーラー「巨人」を作り上げた。最初の「花の章」は青春の息吹を丁寧に歌い上げ、「巨人」は読響の個性と能力を活かし、各パートのキャラクターを立たせて(特にトランペット!)、機能的ながら素朴な味わいも魅力的。各所のクライマックスには良い意味で「アマチュアのような熱気」が感じられ、最終盤のエネルギーには思わず笑顔になってしまう。オケの力量を最大限に引き出す山田ならではの境地であり、ポジティブで人間くさいマーラーは今こそ求められているものだろう。爆発的な大団円直後の歓声にも感慨。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2020年12月号より)
【information】
CD『マーラー:交響曲第1番「巨人」、花の章/山田和樹&読響』
マーラー:花の章、交響曲第1番「巨人」
山田和樹(指揮)
読売日本交響楽団
収録:2020年2月、東京芸術劇場コンサートホール(ライブ)
日本コロムビア
COCQ-85512 ¥3000+税