郷古 廉(ヴァイオリン) ホセ・ガヤルド(ピアノ)

若き才能たちの音楽の自然発火を楽しむ

郷古 廉
C)Hisao Suzuki
 2013年にティボール・ヴァルガ・シオン国際ヴァイオリン・コンクールで優勝を果たして以来、躍進を続ける郷古廉と、アルゼンチン出身、ルックスも音楽もあか抜けた野趣を感じさせるホセ・ガヤルドは、18年、アンドレアス・オッテンザマー(クラリネット)のリサイタルを介してトッパンホールで共演した。マネージャーやプロデューサーたちはそこでピンと来たようだ――この二人のリサイタルを実現したら面白いのではないか、と。

 なるほど、郷古は未知の可能性を多分に残している。ガヤルドは優れた共演者として多くの才能の美質を引き出してきた。二人が触発しあい、心ゆくまでぶつかったら、思いがけないものが生まれてくるのではないか…。

 オッテンザマーのリサイタルで二人はドビュッシーとバルトークを演奏したが、今回のプログラムもその延長に組まれているようだ。バルトーク「ラプソディ第2番」、そしてラヴェルのエキゾティシズム薫る「ツィガーヌ」とヴァイオリン・ソナタ、その間をクライスラー「ウィーン奇想曲」でつないで後半を構成した。これに対し前半は、プーランクとグリーグ(3番)の二つのヴァイオリン・ソナタが置かれている。

 型の定まった重厚な音楽ではなく、ヴァイオリンの機能性が十分に生き、洒脱でロマンティックな歌心を発揮できる、そしてまた強い身体性が感じられ即興性の余地のある音楽。意図が明快で、鮮やかな選曲である。

 お膳立ては整っている。客席にゆったりと腰を落ち着け、音楽の自然発火を楽しもうではないか。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2020年11月号より)

2020.12/16(水)19:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 
https://www.toppanhall.com

*新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ホセ・ガヤルドの招聘を断念することとなりました。本公演は無伴奏ソロ・リサイタルに変更して開催されます。(10/22主催者発表)
詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。

【変更後のプログラム】
ビーバー:《ロザリオのソナタ》より 第16曲〈パッサカリア〉
イザイ:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番 イ短調 Op.27-2
J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番 ニ短調 BWV1004
バルトーク:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ Sz117