ヴェラチーニはイタリア・バロックの鬼才。そのヴァイオリンの技術にはタルティーニもおそれをなしたという。若いころの作品は華麗な技に加え自由闊達さ、破格さが印象的だが、円熟期の「アカデミック・ソナタ」のパッサカリアやシャコンヌには、周囲から「風変り」と呼ばれた思弁性が表れ、「狂気」を意味する次のコレッリの「ラ・フォリア」に流れ込んでいく。丸山韶は弓のコントロールが抜群で、旋律を豊かなニュアンスで肉厚に歌わせたかと思えば、軽やかに飛ばしてスピード感たっぷりに駆けぬける。その至芸に耳を奪われるうちに、いつの間にか18世紀ヴァイオリン芸術の深層へ導かれた。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2020年11月号より)
【information】
CD『フレネジア/丸山韶&アンサンブルLMC』
ヴェラチーニ:「12のヴァイオリン・ソナタ集」より第1番・第6番、「12のヴァイオリンまたはリコーダーのためのソナタ集」より第6番、「12のアカデミック・ソナタ集」よりソナタ第12番/コレッリ:「12のヴァイオリン・ソナタ集」より第12番「ラ・フォリア」
アンサンブルLMC
【丸山韶(ヴァイオリン) 島根朋史(チェロ) 金子浩(リュート) 上尾直毅(チェンバロ)】
レック・ラボ
NIKU-9029 ¥2800+税