反田恭平が自ら立ち上げたレーベルからリリースする、ソロアルバム第一弾。緊急事態宣言の頃に、子どもの頃弾いたメンデルスゾーン「無言歌集」の魅力が心に蘇り、取り組むことにしたという、全曲録音の1枚目でもある。1曲ごとに別の筆に持ち替えるかのごとく筆致を変え、独特の肌触りの音で、各楽曲の心情を描き出す。ピアノは1887年製NYスタインウェイ。歯切れの良い音を響かせる力強い曲も良いが、「後悔」「ヴェネツィアの舟歌」のような、儚げに消えゆく音を絶妙に駆使した曲は特に魅力的。反田の自由な感性が、メンデルスゾーンの歌心と調和している。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2020年11月号より)
【information】
CD『メンデルスゾーン:無言歌集 Vol.1&厳格な変奏曲 Op.54/反田恭平』
メンデルスゾーン:アルバムの綴り「無言歌」ホ短調、無言歌集第1巻〜第3巻より、厳格な変奏曲
反田恭平(ピアノ)
NOVA Record
NR-02003 ¥3000+税