19世紀のヴァイオリンの巨匠ヨーゼフ・ヨアヒムが愛用したことから、その名がある1723年製ストラディヴァリウス〈ヨアヒム〉。現代日本の名匠・永峰高志がこの銘器でヨアヒム自身や、親交のあったシューマン夫妻、そしてブラームスの佳品を紡ぐ。その艶やかな音色は、歴代の巨匠たちの魂が層を成して重なっているよう。名匠は敬意と慈しみ、愛情をもって楽器と作品に対峙、彼らが生きた時代へと聴き手を連れ出す。特に自然なポルタメントは、上品な雰囲気を醸出。ベーゼンドルファーを弾く久元祐子も、繊細なプレイにぴたりと寄り添う、絶妙の好サポートで魅せる。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2020年10月号より)
【information】
CD『ロマンス ヨアヒムの愛器でヨアヒムを聴く /永峰高志&久元祐子』
C.シューマン:3つのロマンス/ヨアヒム:ロマンス 変ロ長調/R.シューマン:3つのロマンス第2曲/ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」
永峰高志(ヴァイオリン)
久元祐子(ピアノ)
マイスター・ミュージック
MM-4079 ¥3000+税