2018年ミュンヘン国際音楽コンクール優勝で脚光を浴びた精鋭トリオのCD第2弾にして初のセッション録音。ベートーヴェンの「作品1-1」の選曲に本格的な第一歩を記す意気込みが表れている。事実同曲は楽聖のフレッシュさと創造力の豊かさを如実に示す精彩に富んだ快演。溌剌たる第1楽章から颯爽たる終楽章まで、表情の移ろいが鮮やかに表出されていく。メンデルスゾーンは有名な第1番ではなく晩年の第2番だが、これを何度も演奏している彼らは、緻密かつドラマティックな表現で、同曲が濃密な傑作であることを知らしめる。今後への期待も膨らむ好盤。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2020年8月号より)
【information】
CD『ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲 第1番、メンデルスゾーン:同第2番/葵トリオ』
ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲 第1番/メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲 第2番
葵トリオ
【小川響子(ヴァイオリン) 伊東裕(チェロ) 秋元孝介(ピアノ)】
マイスター・ミュージック
MM-4078 ¥3000+税