1776年にパリの名匠、クリスティアン・クロルの手で製作されたクラヴサン(チェンバロ)。2008年に丁寧な修復がなされ、本来の豊かな響きを取り戻した。名手・崎川晶子が、この銘器に14年以来再び対峙。“大クープラン”ことフランソワを軸に、その伯父にあたるルイ、従甥アルマン=ルイと、華麗なる音楽一族の佳品を弾いた。自由ながら折り目正しく、感情豊かにして理知的。相反する要素が多層的に織り込まれ、多彩な色彩に溢れた音の花束。崎川はクロルのオリジナル楽器ならではの、底鳴りする低音から煌めく高音までを鳴らし切り、これらの機微をつぶさに掬い取ってゆく。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2020年8月号より)
【information】
CD『クープラン家 幸福な思い/崎川晶子』
ルイ・クープラン:プレリュード ニ短調、アルマンド ニ短調、シャコンヌ「嘆き」ニ短調/フランソワ・クープラン:第2プレリュード、第2オルドル、かわいい年頃、第8オルドル/アルマン=ルイ・クープラン:ド・ボワジュル、悲嘆、フランス人 他
崎川晶子(チェンバロ)
コジマ録音
ALCD-1193 ¥2800+税