福間洸太朗による初めてのオール・ベートーヴェン・アルバム。第17番「テンペスト」と第32番のピアノ・ソナタの間に、第24番「テレーゼ」を置くという形で、個性の異なる3曲が並んでいる。輪郭のくっきりとした音と絶妙なコントロールで奏される「テンペスト」は、胸のすくような演奏。続く「テレーゼ」の可憐な美しさも際立つ。第32番は、メリハリのあるしなやかな表現で音楽が立体的に聴こえ、最後のソナタの気高さ、つくりの見事さを教えてくれる。卓越したテクニックが、思い描く音楽の表現のため十二分に生かされ、選曲のおもしろさもクリアに伝わってくる。
文：高坂はる香
（ぶらあぼ2020年7月号より）
【information】
CD『ベートーヴェン：ピアノ・ソナタ第17番・第24番・第32番／福間洸太朗』
ベートーヴェン：ピアノ・ソナタ第17番「テンペスト」、同第24番「テレーゼ」、同第32番
福間洸太朗（ピアノ）
ナクソス・ジャパン
NYCC-27312 ¥2500＋税