名コンビの最後の来日公演を逃すな!
これは必聴の公演だ。ジンマン&チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団の最後の来日公演である。元々ジンマンの音楽監督の契約は2010年までであったが、オケ側の強い要望のために2014年まで契約が延長されたという。その最終年に日本ツアーが行われる。
ところでジンマンという名前は、ボルティモア響とのアメリカ作品録音、NONESUCHレーベルへのグレツキの交響曲第3番「悲歌のシンフォニー」などの録音によって多少なりとも馴染みのある名前だったとは思うが、一躍話題の人となった録音が1999年リリースのベートーヴェン:交響曲全集であろう。「ベーレンライター版の楽譜を使用したモダン楽器による初録音」との謳い文句と共に発売され、あらゆる箇所で聴いたことのない装飾音が耳に飛び込んでくる、やりたい放題の饒舌な─しかし不思議にうるさくないのだ─演奏が絶賛されたことを覚えていらっしゃる方も多かろう。当初「これがベーレンライター版の楽譜?」との疑問が渦巻いたこともあり(実際にはジンマンのアイディアが多数と本人のインタビューで判明)大注目されたこのベートーヴェン以降、R.シュトラウス、シューマン、マーラー、シューベルトなどのヒット作を次々に繰り出すこのコンビ。実演ならではの彼らの魅力とは、徹底的に練り上げられた響きの上質の質感、肌触りの繊細さ、各パートの最上のバランス感覚、考え抜かれたアーティキュレーションにより、あらゆる声部の動きが克明に耳に飛び込んでくる点であろう。響きが見事に階層化されているからオケがどれだけ鳴ってもまったく混濁せずに常に透明であり、ただただ音楽的である。これは録音でも感知できるところではあるが、実演に接してみればその素晴らしさは段違いだ。筆者は2006年来日時にマーラーの「巨人」に接したのだが、そのあまりのクリアな音像に驚かされた記憶が蘇る。
今回のメイン・プログラムはブラームスの交響曲第1番と第4番。ディスクでは抑制されたトーンの中で(そう、作品によって多弁になったり寡黙になったり、大きくアプローチを変化させるのがジンマンなのだ)繊細な響きの変化を聴かせてくれる大変美しい名演だったが、そういう演奏であるだけに実演に接することによりその本質が一層感知されるのは間違いあるまい。
そして、ベートーヴェンとモーツァルトのヴァイオリン協奏曲でソロをつとめるのがギドン・クレーメル。特にベートーヴェンは聴き逃せない。録音では、クレーメルはマリナー盤でシュニトケ版の、アーノンクール盤では「ベートーヴェンが自作のヴァイオリン協奏曲をピアノ協奏曲に編曲した際に書いたカデンツァをさらにヴァイオリン用に編曲、そこにピアノとティンパニも加えた版」を使用。どちらもセンセーションを巻き起こしたのはご存知だろう(1986年のN響出演時にはシュニトケ版カデンツァを使用、さらにそこにクレーメル自身が自作を盛り込んで凄まじかったとのこと・・・)。さて今回は一体どうなることやら?
文:藤原聡
(ぶらあぼ2013年12月号から)
Information
デイヴィッド・ジンマン(指揮) チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団
ギドン・クレーメル(ヴァイオリン)
★4月18日(金)19:00・サントリーホール
★4月19日(土)17:00・サントリーホール
ローチケLコード37481
他公演:
4/11・アクロス福岡
4/12・愛知県芸術劇場コンサートホール ローチケLコード43638
4/13・大阪/フェスティバルホール ローチケLコード59407
4/15・札幌コンサートホールKitara
4/17・新潟市民芸術文化会館りゅーとぴあ
総合問合:ミュージックプラント03-3466-2268 http://www.mplant.co.jp