ギターで捧げるシューベルトへのオマージュ
多彩な人である。クラシック・ギタリストとして可能性のあることにはすべてチャレンジしてきた、そんなイメージのある鈴木大介。
「今年、50歳になります。だから、という訳ではなく、これまで何年も自分なりに考えてきたことがありまして、それは例えばギターの奏法の統合であったり、レパートリーのことであったり、様々な想いが折り重なっていました。そんな時にたまたま同時にシューベルトに繋がる企画が進行していたのです」
今年の「東京・春・音楽祭」では豪華なメンバーとシューベルトの作品を演奏する一夜を開催する(3/21)。そして新たな録音となる『シューベルトを讃えて』(アールアンフィニ/ソニー・ミュージックダイレクト)を昨年10月末に録音し、こちらも3月中旬にリリースされる。
「録音プロデューサーの武藤さんが僕のバッハの演奏を聴いて、ぜひ録音したいと声をかけてくれました。ありがたいお話でしたが、コンサートの計画もあって、今回はシューベルトにしたいとお願いしました。“鈴木は映画音楽を弾くギタリスト”という認識が世間では定着しているようなのですが(笑)、ザルツブルク・モーツァルテウム音楽院に留学時からアカデミックな部分の探究も続けてきて、それをそろそろ後輩たちにも伝える時期かなと思っていたので、こうしてシューベルトにまつわる様々な作品を集めた録音ができたのはとても嬉しいことでした」
新アルバムに収録されたポンセの「ソナタ・ロマンティカ“シューベルトを讃えて”」は1990年代にも一度放送用に録音したことがあるそうで、実に25年ぶりの再録音となった。ヨハン・カスパル・メルツによる歌曲の編曲、ヨーゼフ・ランツの佳品、そしてシューベルト自身の「楽興の時」第2番、第3番のギター編曲版など魅力的なラインナップだ。
「実演でも、これまでに『美しき水車小屋の娘』を様々な歌手の方々と共演させていただき、シューベルトにまつわる作品にはなぜか縁がありました」
「東京・春・音楽祭」では、上村昇(チェロ)との「アルペジオーネ・ソナタ」や、上村のほか豊嶋泰嗣(ヴィオラ)や梶川真歩(フルート)を交えた「ギター四重奏曲 D96」、そして繊細な歌唱が魅力のアリスター・シェルトン=スミス(バリトン)を迎えて、シューベルトの「春」にまつわる歌曲を集めたパートなど、盛りだくさん。
「もしかしたら3時間を超えるコンサートになるかも? でも、ここでしか味わえないコンサートだと思うので、ぜひいらしてください」
またひとつ、“春”の楽しみが加わった。
取材・文:片桐卓也
(ぶらあぼ2020年3月号より)
東京・春・音楽祭 2020
シューベルトの室内楽Ⅰ 〜鈴木大介(ギター)と仲間たち
2020.3/21(土)18:00 東京文化会館(小)
問:東京・春・音楽祭チケットサービス03-6743-1398
https://www.tokyo-harusai.com
SACD『鈴木大介/シューベルトを讃えて』
アールアンフィニ
MECO-1058 ¥3000+税
2020.3/18(水)発売