阪田知樹(ピアノ)

フランツ・リスト国際コンクール覇者が贈る、3部構成の贅沢な演奏会

C)HIDEKI NAMAI

阪田知樹のピアノへの愛着が滲み出るようなプログラムによる、3部構成のリサイタルが開催される。内容は、モーツァルトで幕を開け、ソナタの大曲を置き、華やかな編曲作品で閉じるというもの。

「3部構成には、昔の演奏家へのオマージュの意味もあります。1900年代初頭の大ピアニストのリサイタルは、1部に古典的な作品、2部にメイン、3部にお客様が楽しめる作品という構成が多いのです。また、各部が短く休憩が2回入ると聴きやすいという声が多かったことも理由です」

作曲も手がける阪田らしい美点は、第1部から発揮される。
「あの時代のバックハウスやリパッティのライヴ録音を聴くと、舞台に出てポロポロと即興的に少し弾いてから曲に入ります。私も今回はそんな風に、即興でモーツァルトやシューマンを聴く空気を作ってから演奏に入ってみたいと思います」

第2部では、敬愛するリストのロ短調ソナタを演奏する。
「この1年でベートーヴェンの後期ソナタを弾く機会があり、改めて、リストのソナタはその延長線上に位置すると感じました。全楽章アタッカでつなげられ、幻想曲風に書かれていますが、構成感が大切なソナタ作品であることに間違いありません。人生を凝縮して表現した哲学のような作品でもあります。一生取り組むつもりです」

そしてアンコール集のような趣の第3部が続く。
「昔から編曲作品を調べるのが好きで、家に楽譜がたくさんあるので、迷いに迷って曲を絞りました。チャイコフスキーの交響曲『悲愴』第3楽章のフェインベルク編曲版はずっと弾きたかった作品。オーケストラ演奏でもこの後につい拍手が出るような華やかさがありますから、きっと楽しめると思います。バラキレフ編のショパンの協奏曲第1番第2楽章も、聴く印象以上に超絶技巧を要しますが、様々な楽器を感じる美しい編曲です。そしてヴェルディ(リスト編)『リゴレット・パラフレーズ』。オペラの編曲ものは、好きな歌手を何度も聴き、フレージングや息遣いから感じた表現を試していきます。ピアノでいかに歌えるかは一番大切なことです」

リサイタルの1週間後には、「国際音楽祭NIPPON 2020」の室内楽マラソンコンサートにおいて、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタで諏訪内晶子と初共演する。
「子どもの頃、アシュケナージ指揮チェコ・フィルと共演する諏訪内さんのCDを本当によく聴きました。そんな方の音を共演者として間近で聴けるのが、とにかく楽しみです」
3月の初めは、阪田の幅広い才能を楽しむことになりそうだ。
取材・文:高坂はる香
(ぶらあぼ2020年2月号より)


*新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、本公演は延期となりました。(2/28主催者発表)
詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。

阪田知樹 ピアノ・リサイタル
2020.3/1(日)13:00 横浜みなとみらいホール
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212
https://www.japanarts.co.jp