オペラ界のレジェンドが来日 バリトンの美声で聴かせるオペラ・アリアや名旋律の数々
プラシド・ドミンゴがこの1月に来日する。期待の若手ソプラノを連れて。来年4月のオリンピック関連のイベントは辞退したものの、コンサートのために来日する。そもそもドミンゴは昔から、オペラもコンサートもなるべくキャンセルしない、ということをポリシーにしている。思い起こせば2011年3月の東日本大震災の直後、多くのスター歌手が相次いで来日をキャンセルしたにもかかわらず、ドミンゴだけは震災の翌月4月初旬に、奥さんと孫娘を連れて来日した。そのアンコールでは「ふるさと」を日本語で歌い、犠牲になった多くの人に捧げるという感動的な場面が繰り広げられた。そもそも人間としての厚みが違うのだ。
ドミンゴはいま78歳。1月21日には79歳という歌手としては最高齢の現役だ。トップ・テノールとして長いキャリアを積み重ねてきたが、09年からはバリトンという新しい地平で第一歩を踏み出した。その最初の舞台はベルリン国立歌劇場での《シモン・ボッカネグラ》で、以後特にヴェルディの《椿姫》《リゴレット》《マクベス》《イル・トロヴァトーレ》などのバリトンとしてスカラ座、ウィーン国立歌劇場、ロイヤル・オペラなどで大活躍、来年もぎっしりと公演の予定が入っている。先頃発表された20年のザルツブルク音楽祭でも、《シチリア島の夕べの祈り》に主演することが決定している。
さて、東京国際フォーラムでの1月28日と、サントリーホールでの1月31日のコンサートだが、当初予定されていたルネ・フレミングは諸般の事情で来日せず、代わりに若い上り坂のソプラノがドミンゴと共演する。その名はサイオア・エルナンデス。18年のミラノ・スカラ座シーズン・オープニングの《アッティラ》のオダベッラ役でデビュー。以後バルセロナのリセウ大劇場をはじめ、世界の一流歌劇場に出演。またロイヤル・オペラにはアラーニャと共演して《アンドレア・シェニエ》でデビュー。19年12月からのスカラ座のシーズン・オープニングではネトレプコとダブルで《トスカ》タイトルロールを務める。さらに20年9月のスカラ座来日公演でも同役を歌うことが予定されている。まさにスペインが生んだ超期待のソプラノだ。サントリーホール公演はオペラ・アリアとオペレッタが中心。東京国際フォーラム公演ではオペラ・アリアからミュージカルまでが予定されている。演奏はユージン・コーン指揮の東京フィルハーモニー交響楽団。
文:石戸谷結子
(ぶらあぼ2020年1月号より)
プラシド・ドミンゴ プレミアム コンサート イン ジャパン2020
2020.1/28(火)19:00 東京国際フォーラム ホールA
1/31(金)19:00 サントリーホール
問:チケットスペース03-3234-9999
https://www.ints.co.jp