信頼厚いコンビならではの“真打ちの名演”
何度も名演を積み重ねてきて、そのことをだれもが知っていて、それでも期待を上回るような演奏をさらに重ねていく。指揮者と楽曲におけるそんな関係性の代表例が、マエストロ小林研一郎によるスメタナ「わが祖国」である、と言っても過言ではないだろう。チェコをはじめ東欧と関係の深い小林の、自他共に認める得意演目であり、2002年には最高の舞台「プラハの春」オープニング・コンサート(「わが祖国」で開幕するのが恒例)にも登場。日本でもチェコ・フィルとの同演目で会場が沸き上がるような名演を披露、さらには国内の複数のオーケストラでもこの曲を指揮して毎回のように大評判になっている。常に「名演」を期待されながら、それに応え続けてきた。
この1月には、小林と日本フィルの「わが祖国」が実現する。もとより長年にわたり多くの名作で熱演を積み重ねてきた、深く信頼しあうコンビである。ある意味では“当然のように”特別な演奏が期待される条件がそろったわけだが、おそらく今回もそれを上回るような体験ができるはず。しかも、持ち前の炎のような情熱と、近年の落ち着いた深みが感じられる、予想できるようでできない、今だからこそ聴ける小林の新境地も示されるだろう。
これまで聴いてきた人にとっても注目の機会なのはもちろんだが、もし「コバケンのわが祖国」を体験したことがなければ、とにかく聴いてほしい公演となる。後に語り継がれるような「真打ちの名演」というものを体験できる機会は、そう多くはない。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2020年1月号より)
第717回 東京定期演奏会
2020.1/17(金)19:00、1/18(土)14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911
https://www.japanphil.or.jp