チェンバロとヒストリカル・ハープの名手で、古楽集団「アントネッロ」のコアメンバーでもある西山まりえ。継続的に取り組む「バッハエディション」第5弾で、チェンバロのための「トッカータ」に対峙した。自筆譜が現存しない作品も含むが、若き大バッハが作曲したと推定される全7曲。後年の作品の熟達には及ばぬものの、逆にそこにはない、瑞々しさと自在さに溢れる。西山は、そんな魅力を充分に理解し、何よりも“即興性”を重視。豊潤な響きをもつタスカン・モデルの銘器を存分に鳴らし、寄せては返す波を思わせる、自然な音楽の伸縮と流れを形創ってゆく。
文:笹田和人
(ぶらあぼ2019年10月号より)
【information】
CD『バッハ:トッカータ集/西山まりえ』
J.S.バッハ:トッカータ ニ短調 BWV913、同ニ長調 BWV912、同嬰へ短調 BWV910、同ホ短調 BWV914、同ト短調 BWV915、同ハ短調 BWV911、同ト長調 BWV916
西山まりえ(チェンバロ)
OMF
KCD-2073 ¥2500+税