景山昌太郎(ヴァイオリン)

共演を通じて父と向き合う

C)Eiji Yamamoto

 若いうちから海外で活躍している日本人音楽家は少なくない。中でも活躍顕著な一人が、ドイツのハーゲン歌劇場の第1コンサートマスターを任されている景山昌太郎である。この7月、彼の室内楽シリーズ「音楽の捧げもの」が2年ぶりに開催され、名ヴァイオリニストである父・誠治との共演が実現するということで、注目を集めている。

 景山がドイツで活躍するに至った経緯を聞いたところ、10代の時期の音楽経験と出会いが大きいという。
「それまではソロが中心でしたが、中学1年から山本直純さん指揮のジュニア・フィルハーモニック・オーケストラに入団して、オーケストラで仲間と音楽を作る喜び、名曲の感動を体験できました。2006年からはキンボー・イシイさんが客演指揮者を務め、私は3年間コンサートマスターを担当しました。それがご縁となって、キンボーさんが音楽総監督を務めるドイツのマクデブルク歌劇場に参加できることになり、東京藝大大学院を休学し、11年夏に渡独しました」

 その後、ハーゲン歌劇場オーケストラのコンサートマスターのオーディションに合格し、2013/14シーズンより現職を務めている。

「ハーゲン歌劇場は現在かなりの多国籍楽団で、全く違った気質、感性を持つメンバーを同じ方向にまとめていかねばなりません。日々異なる演目をこなしていくのも歌劇場ならでは。臨機応変に演奏するのは大変ですが、歌劇場専属楽団のない日本では経験できない面白さでもあります」

 本公演のシリーズ名「音楽の捧げもの」は、「毎回異なるゲスト、編成で開催する」という意味を込めて、1曲以外は楽器指定のないJ.S.バッハの同作品名を掲げたもの。全国3ヵ所で開催し、20世紀フランスもの中心の演目で、同国で学んだ三善晃のソロ曲「鏡」も取り上げる。

「各回で公演タイトルも掲げていて、今回は『鏡』です。三善作品のほか、多声的なバルトークやミヨーのヴァイオリン・デュオ、ブルースを取り入れたラヴェルのソナタなど、他者と自分を映し出す『鏡』を連想させる作品が並び、お楽しみいただけることと思います」

 景山誠治とのステージでの共演は意外にも今回が初。ケルン音楽大学講師を務め、公私のパートナーとして舞台を重ねているピアノの富田珠里も加わり、家族の親密さと妥協のない緊張感が両立する公演となりそうだ。

「父は目標であり、憧れの存在です。音楽家として遠い存在と感じたこともあります。しかし今回、父が還暦を迎えるタイミングに、“一人の音楽家”として会話をしてみたいという思いから共演をお願いしました」

 どんな質問にも実直に言葉を紡ぐ景山昌太郎。名手の父子が揃う待望の公演で、要職の成果を真摯に、熱く聴かせる。
取材・文:林 昌英
(ぶらあぼ2019年7月号より)

音楽の捧げもの vol.2 鏡
2019.7/24(水)18:30 大阪狭山市文化会館(小) 
7/28(日)14:00 サンポートホール高松(第1小)
7/31(水)19:00 ルーテル市ヶ谷ホール
問:Art-Laboratory 080-7963-1959
  ミリオンコンサート協会03-3501-5638(7/24, 7/31のみ) 
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