“悲哀の中から立ち上がる力”を聴きとる
2017年にデビュー30周年を迎えたピアニストの仲道郁代が、これを機にベートーヴェン没後200年とデビュー40周年となる2027年に向けて意義深いプロジェクトを実践している。題して「Road to 2027」。これは毎年2回、春にはベートーヴェンをメインに据え、彼と関連する作曲家の作品でプログラムを構成した「ベートーヴェンと極めるピアノ道」を行い、秋にはピアノならではの表現をインティメートに感じることができる、音響の良い小規模なホールでのリサイタルを作り上げるプロジェクトである。
昨年春の「ベートーヴェン〜」シリーズでは「熱情」を中心としたプログラムだった。今回は「悲哀の力」と題し、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第8番「悲愴」、ブラームスの「8つの小品」、シューベルトのピアノ・ソナタ第19番が組まれている。仲道は「これらの作品には悲哀の中から立ち上がる力というものが潜んでいる。彼らの音楽に感じる強い意志、悲哀の奥底にある強い想い。それを聴いていただきたい」と語っている。
ベートーヴェンの「悲愴」は従来のピアノ・ソナタには見られなかった荘重な序奏部が特徴で、情熱と悲壮感に満ちた圧倒的なエネルギーを備えたソナタ。ブラームスの「8つの小品」は円熟期に書かれた滋味豊かな作品。全曲が演奏されることは多くないため、貴重な機会である。シューベルトのピアノ・ソナタ第19番は死の年に書かれた3曲のソナタの第1作。ベートーヴェンに対する敬愛の念が強く打ち出された作品だ。これらを仲道は各曲の魂に寄り添うよう、作品の内奥に迫る。
文:伊熊よし子
(ぶらあぼ2019年5月号より)
2019.5/26(日)14:00 サントリーホール
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212
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